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「ふ、ははっ」
綴先輩が笑っている。
そして手元には俺のスマホが握られていた。
心臓が破裂しそうで、胸元をぎゅっと掴んだ。
ゆっくりと綴先輩に近づく。
微かに聞こえてきた音で俺は気づく。きっと劇をみてくれている。
俺、綴先輩を笑わせられている。
困惑とじわじわと込み上げてくる喜びの中で俺は声をかけようと口を開いた。それと同時に綴先輩が顔を上げる。
なぜか泣きたくなった。
駆け寄って俺は泣くのを我慢するように先輩の手元にあるそれに指を差した。
「そ、それ、俺のスマホっすよね、てか今あの、笑って…」
手を掴まれて、引き寄せられる。気づけば綴先輩に抱きしめられていた。
ああ、やっぱり好きだ。
「好きだよ、一星」
耳元で聞こえた言葉。泣くのを堪えた、きゅっと唇を結んで綴先輩の背中に腕をまわす。
綴先輩の肩に顔を埋める。そっか、綴先輩、俺のこと好きなんだ。
俺、綴先輩と両思いなんだ。これ、夢かな。
「なんで、俺が、先に告白するつもりだったのに」
「…一星、泣いてる?」
「泣いてねえし」
綴先輩が俺の体を離そうするので、俺は背中にまわしている腕に力を入れて顔を埋めたまま首を横に振る。
「一星、顔みたい」
「無理」
「…俺だって一星の色んな顔みたいって思ってる」
「っ」
「一星」
優しく、甘さを帯びたその声。花火の時だってそうだ。この人はこういうところがずるいと思う。
ゆっくりと体が離れて、俺は下を向く。綴先輩は俺の頬を片手で包んで少し身を屈めた。
「…かわいい」
「嬉しくないです」
綴先輩は、小さく笑ってこつんっと額同士をぶつけた。
「劇、面白かった」
「い、色々、ききたいことはありますけど、笑い顔見れたので良かったです」
「俺、一星の前では結構笑ってると思うけど」
「タイミング悪くいつも笑ってる顔は見れなかったから」
「…じゃあこれからは逃さないで」
「っ」
綴先輩が優しく唇を重ねる。一度離れて目が合う。
体中にまわる熱でどうにかなりそうだった。
このままでは本当に本当に心臓が爆発する、まじで。
「つっ、綴先輩」
「ん?」
「心臓が限界です、俺、あのこういうのあんまり慣れ…」
慣れてないって言ってんだろ。
何でこの人こういう時は突き進んでくるんだ。
思わず身が逃げようと後ろに引かれるが綴先輩はそれを許してくれない。
キスをしたまま、腰にまわった腕がぐっと引き寄せてくる。
花火の時より、熱を感じる。
それは綴先輩の気持ちが分かったからそう感じてしまうのか、何かのストッパーが完全に外れた綴先輩の恋情がそうさせているのか。
まあ、悔しいがどちらにしても嬉しいのは確かだけど。
「ほん、っとに、まじで、一旦ストップっ」
噛み付く勢いでくる綴先輩にストップをかけて、綴先輩の身をぐっと離す。



