ーーー結果的に言うと、綴先輩は来なかった。
ステージの上からこれでもかと言うほど目を凝らしたがやっぱりいなかった。
劇は大成功だった。俺が作り上げた世界観が形となって、観てくれる人たちが感情を爆発させて、達成感と満足感を感じる。だけどやっぱり綴先輩に観てほしかった。
ぽっかりと心に穴が空いたような気持ちになる。
兄貴のあの口ぶりだと学校にはきてんだよな。
外部の人間と接触をすることも可能なため、『年上の女』と話していたというのも嘘ではないのだろう。
でも、もめてたって。
年上の女といい感じだという噂は本当で、カップルの痴話喧嘩的な。
え、じゃあ俺、綴先輩の何なの。ただの暇つぶし要因?
「元気だしなよ、生田くん。劇は大大大成功だったじゃん」
「うるせえな、もう劇終わったんだから着いてくんなよ」
「どうせ文化祭周る人いないんでしょ?切り替えて楽しもうよ。あ、タピオカミルクティー奢って」
「遠慮もかけらもないな、原瀬さん。
それに、日下部とかは部活の出し物があるから無理なだけで別に周る人がいないとかそういうんじゃねえし」
ちょっと1人になりたい気分だったのもあるけど。
「ぐちゃぐちゃうるさい、早く奢って」
グイグイと腕を引っ張られる。
まあ正直今は原瀬さんの無神経さに少し救われているような気もする。
脚本のことも原瀬さんがいなかったらできなかったわけだし、タピオカミルクティーくらい奢ってやろう。
「生田くん、写真撮って」
「え、ツーショットは無理」
「自惚れんなよ、タピオカミルクティーと私の写真を撮れって言ってんの」
「はいはい」とポケットからスマホを取り出そうとしたが、中には何もなかった。
あれ?と反対側のポケットにも手を突っ込む。
「何やってんの生田くん」
「…スマホがない」
今日はきっと厄日だ。



