だが、現実は非情なもので。
「どうでもいい」
吐き捨てられた言葉に俺はフリーズする。
綴先輩は俺に背中を向けて歩き出した。ムカつく、なんだよそれ。
唇を噛み締めて完成しかけている台本の束を片手で握りしめる。
見えなくなった綴先輩の空虚を睨みつけていると、ぽんっと肩に手がのった。
「こじらせてんのね、あんたたち」
「言うな」
慰める気もないのかよ。ふいっと不貞腐れたように歩き始めた。
「どうでもいい」か。本心かな、あの表情はよく分からなかったな、そう考えたら、俺たちの関係、振り出しに戻ってないか、もはや後退してる気がする。
「あのさ、生田くん」
「んだよ」
「たぶん今ショックすぎて頭まわってないと思うんだけどさ、今の状況ってたぶん、し…」
「あ?」
「いや、なんでもないわ言っちゃうとおもろくないから」
「はあ?なんだよ、言えよ」
「いや、自分で気づいた方がいい。前にも言ったけどあんたが崇め奉ってる綴秋斗も人間で、私たちと同じ感情があるってこと忘れないでね」
「そんなことは分かってんだよ」と怒りながらも内心は原瀬さんの言っている本当の意味も、綴先輩の気持ちも全然分からない。
ただ分かっているのは、俺が片想いをすねらせているということだけだ。
しかし、ここまできたら逃げるわけにはいかない。
「当たって砕けろってことだな原瀬さん」
「砕けるのかあ…」
原瀬さんは少し不服そうな顔をしながら、それ以上は何も言わなかった。



