生意気でごめん、先輩



「何なんだろうな、ほんと」

小さく呟けば、原瀬さんは興味深そうに頬杖をついた。

「なんかエモたらしい感じ?」

「はい?」

「はいはいはい、分かりましたでは中心は『綴先輩を笑わせたい』で」

何も分かっていなさそうな軽い口調でそう言って原瀬さんは紙の中心に『綴先輩を笑わせたい』と書いた。
その文字をみると、なんだか心の内がむず痒くなる。
ストレートに文字に起こすとそれはそれでこっぱずかしい感じがする。

「しかし、この生田くんの願望はクラスの皆んなには黙っておきましょう、皆んな生田くんのエゴに付き合わされると勘違いしますから」

「俺のエゴ…綴先輩もそう思うかな」

「知らんがな。私は綴秋斗を何も知らない」

「…俺もたいして綴先輩のこと知らねえよ」

「はいはい、なるほど」

小さく頷いて『綴先輩を笑わせたい』から小さな線を引っ張り、『何も知らない』と文字が連なる。
俺はペンケースからもう一本シャーペンを取り出した。
綴先輩を笑わせたい、からまたもう一本を引っ張る。

『本当は色々と思ってることがありそうなミステリアスキャラ』

そこからまた線が引かれる。

『クールぶってるが、時々イラついてる時もある、言葉には出さない』

『近づかないでオーラ半端ない。おそらく無自覚』

『友達ほしいとか内心は思ってそう』

『実はむっつり』


「生田くん」

「あ?」

「綴秋斗の悪口チャートじゃないんだけど」

「分かってるけど」

「本当にエモい関係?」

「そもそもエモい関係ってなんだよ」

「契りを交わした関係かってこと」

「古文?交わしてないし、そもそも付き合ってねえし」

ーーーキスはしたけど。

「好きなの?」

「…っ」

なんで契りとか言ってたやつがいきなりストレートに聞いてくんだよ。紙の上でシャーペンの先の芯がパキンと折れる。


「はいはいはい、生田くんは綴秋斗が好きと」

「書くな書くな」

動かし始めるシャーペンを必死に止める。誰かに見られたらどうすんだ。まあすでにやばいのが出来てるけど。まかり間違って綴先輩にこれが見られたら確実に終わる。

「なあ」

「なんでしょう」

「これ、ほんとに上手くいくか?」

「不安になる前にひとまず書くんだよ、手動かせば絶対降ってくるから」

そういう原瀬さんが小さく線を引いて『うんこ』と書いた。何なのこいつまじで。
俺はため息をついて自分の手のひらに顎を預けてカチカチとシャーペンの芯を出す。