「じゃ、また」
駅まで一緒に歩いた。
改札のところまで来ると綴先輩はそう言った。「また」は素直に嬉しい。なんだよ、もう吊り橋効果は終わってんだろ。と、胸のあたりをぎゅっと掴む。
そんな俺を気にも留めない綴先輩は背中を向けて歩いていく。
「綴先輩」
呼べば、綴先輩は振り返ってくれた。「なに」といつも通りの口調の綴先輩に俺は何と言ったらいいか分からず言葉を詰まらせる。
「…一星まさか、ゾンビが怖くて1人で帰れない?」
「はあ!?違うし!」
「そう、じゃあ気をつけて」
そう言ってまたもや背中を向けてしまう。そんなことはさらさらないが「怖い」と言えば家まで送ってくれるとでも言うのだろうか。そんなこと綴先輩がやれば女なんてイチコロである。
そんなことを思いながら綴先輩の背中をぼんやりと見つめていると「あ」と綴先輩はこちらを再度振り返った。
もうこっちなんて見ないだろうと思っていたので、緊張で肩があがる。
「なんすか!」
「…意外と楽しかった」
「え」
「一星が言ってた、『高校生らしいこと』」
「そ、うですか、良かったです」
「それに、面白かった」
「何がですか」
「生意気な一星の、意外な一面みれたから」
「はあ!?」と続けて憎まれ口を叩こうとしたが、綴先輩は満足したのか早歩きで歩いて行ってしまう。うわ、言い逃げだよタチ悪い。
それに、
「なんでこういう時はよく喋んだ、あの人」
意外な一面?こちらのせりふである。



