生意気でごめん、先輩



「だから、たまたま調子が悪かっただけで」

「テストの日高熱でも出したの」

「綴先輩でも冗談とか言うんすね」

「…本気できいてる」

「ああ、ええっと、まあ、その調子が悪いというか数学ってだけで頭が痛くなるというか」

「…俺はこの点数みて頭が痛くなった」

「アハハ、オモシローイ」

パチパチと手を叩けば綴先輩の黒い瞳が睨みつけるように俺を見た。え、怒ってんの、なんで。
ちょっとしたジョークでも吐き出されたのかと思ったけれどそうではないらしい。俺のテストの点数が人の体調まで影響を与えてしまうとは。おそろしいな、2点のテスト用紙。

しわだらけのそれを綴先輩がやや荒めに俺の胸元に押し付けた。

「…今日、放課後校門の前集合」

「え?」

「…いなかったらもう知らないからな、一星」

「え?」

ふいっと背中を向けられてスタスタと歩いていく綴先輩。今、なんて。
頭の中で綴先輩の言葉を再生する。

ーーーー『今日、放課後校門の前集合』

ーーーー『…いなかったらもう知らないからな、一星』

俺は先生の荒々しい『2点』と書かれた数字を見つめる。要は、俺のこの凄まじくやばいテストが『こいつどうにかしてやらないと』という親心的なものを芽生えさせたということだろうか。え、すごくない、やばくない俺の2点パワー。

「ありがたく、行かせていただきますっ」

誰もいなくなった階段に向かって俺はそう言った。