あの日の春に、嘘をついた

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氷空くんへ

この手紙が届くころ、
わたしは、もう“いない”人になっているかもしれません。

でも、どうしても言葉にしておきたかった。
出会う前のわたしが、
まだ、あなたに“見つけてもらう前”のわたしが、
あなたにどうしても伝えたいことがあります。

 

わたしは、ずっと、
“生きている意味”を探してきました。

でも、誰にも気づかれないまま日々が過ぎて、
わたしの声も、名前も、全部、
どこにも届かないような気がしていた。

そんなとき、
夢の中で、あなたの声を聞きました。

「透」

その声が、どこまでも優しくて、
何度も、何度も、わたしを呼んでくれた。

目が覚めたとき、涙が止まらなかった。
でも、不思議と、あたたかかった。

そのとき、決めたんです。
会いに行こうって。
あなたに、名前を呼んでもらうために。

 

氷空くん。
あなたに出会えて、本当によかった。
あなたがわたしを見つけてくれて、
名前を呼んでくれて、
まるでわたしが“存在していいんだ”って、
そう思えたあの日のこと。

一生、忘れません。

──ありがとう。
──ずっと、好きでした。

白雪透より

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