わたしは、まっすぐに自分を肯定されたことに驚く。間抜けな顔をしているだろう。
「音が色で見えるなんて。共感覚のことは聞いたことがあるけれど」
わたしは、頭が真っ白になりながらも、口を動かす。燕のひなのようだ。
「昔、調べたら、共感覚は人によって感じ方の違いがあるみたい。わたしは、色や、ときどき形で感じる」
「感受性が強いんだね」
「……変だと思わないの?」
「え、なんで? 思わないよ」
悠誠くんは少し首をかしげる。心底不思議そうな顔でわたしを見る。そこには、一片の疑いも嘲りもなかった。ただ、まっすぐにわたしの言葉を信用し、その心を返していた。
嘘を含んだ言葉は、なんとなくわかる。声の色に濁りが出る。しかし、悠誠くんの言葉は透明だ。
悠誠くんは、本音で話してくれる。わたしをわたしのまま見てくれる。
頬に雫が流れ落ちる感触がして、それは顎先で結ばれて落ちた。
「え! どうしたの」
悠誠くんが動揺する。
「ご、ごめん」
わたしは、涙を拭く。
「ちょっと今日、落ち込んでいて」
「そういえば、こんな時間に学校にきて、どうしたの? 僕が言えることでもないけど」
悠誠くんは、ピアノの椅子を持ってきて、わたしに差し出した。
「いまさらだけど、立ちっぱなしにさせてごめんね。座って」
わたしは小さく頷く。その椅子に座ることは、音楽の大場先生の特権で、わたしはドキドキしながらピアノの椅子に座った。
悠誠くんは、並べられた生徒用の椅子に座る。二個の椅子に渡すように置かれた紺色のバイオリンケースに、バイオリンをしまった。
「それで、こんな夜にどうしたの?」
「音が色で見えるなんて。共感覚のことは聞いたことがあるけれど」
わたしは、頭が真っ白になりながらも、口を動かす。燕のひなのようだ。
「昔、調べたら、共感覚は人によって感じ方の違いがあるみたい。わたしは、色や、ときどき形で感じる」
「感受性が強いんだね」
「……変だと思わないの?」
「え、なんで? 思わないよ」
悠誠くんは少し首をかしげる。心底不思議そうな顔でわたしを見る。そこには、一片の疑いも嘲りもなかった。ただ、まっすぐにわたしの言葉を信用し、その心を返していた。
嘘を含んだ言葉は、なんとなくわかる。声の色に濁りが出る。しかし、悠誠くんの言葉は透明だ。
悠誠くんは、本音で話してくれる。わたしをわたしのまま見てくれる。
頬に雫が流れ落ちる感触がして、それは顎先で結ばれて落ちた。
「え! どうしたの」
悠誠くんが動揺する。
「ご、ごめん」
わたしは、涙を拭く。
「ちょっと今日、落ち込んでいて」
「そういえば、こんな時間に学校にきて、どうしたの? 僕が言えることでもないけど」
悠誠くんは、ピアノの椅子を持ってきて、わたしに差し出した。
「いまさらだけど、立ちっぱなしにさせてごめんね。座って」
わたしは小さく頷く。その椅子に座ることは、音楽の大場先生の特権で、わたしはドキドキしながらピアノの椅子に座った。
悠誠くんは、並べられた生徒用の椅子に座る。二個の椅子に渡すように置かれた紺色のバイオリンケースに、バイオリンをしまった。
「それで、こんな夜にどうしたの?」



