お父さんは出張で、お母さんは持ち帰りの仕事に集中している。お兄ちゃんは、自室で勉強をしている。
深夜十一時。わたしは、家を抜け出した。
外は霧雨は止み、晴れている。星々が空を埋め、月が大きく笑っている。
初めて家を抜け出した日のようだ。わたしは、Tシャツにチェックのシャツを羽織り、デニムパンツと履き古したスニーカーで細い道を歩いていく。
青々と茂った畑の枝葉が、生温かい風に揺れる。昼間の霧雨で湿った空気を存分に吸い込み、わたしは空を眺めながら、ゆっくりと歩いた。
音楽室には、明かりが灯っていた。そして、青の音が聞こえた。
もう、聞けないかと思った。悠誠くんの秘密を知ってしまったから。
しかし、悠誠くんは待っていてくれた。いや、待っていたのかわからない。ただ、逃げられないだけなのかもしれない。
わたしは、待っていてほしいと願っているだけだった。
いつものルートで校舎に入り、靴下で階段をのぼっていく。
音楽室の前に着いた。深呼吸してから、ノックをした。
青の音が止まる。かちゃりと扉が開いた。
「悠誠くん……」
「いらっしゃい、瑠衣ちゃん」
悠誠くんは、何も変わらずに微笑んでいる。あの、二十三年前のあの写真と、何も変わらなかった。
「こんばんは、悠誠くん」
わたしは笑顔で答えた。
深夜十一時。わたしは、家を抜け出した。
外は霧雨は止み、晴れている。星々が空を埋め、月が大きく笑っている。
初めて家を抜け出した日のようだ。わたしは、Tシャツにチェックのシャツを羽織り、デニムパンツと履き古したスニーカーで細い道を歩いていく。
青々と茂った畑の枝葉が、生温かい風に揺れる。昼間の霧雨で湿った空気を存分に吸い込み、わたしは空を眺めながら、ゆっくりと歩いた。
音楽室には、明かりが灯っていた。そして、青の音が聞こえた。
もう、聞けないかと思った。悠誠くんの秘密を知ってしまったから。
しかし、悠誠くんは待っていてくれた。いや、待っていたのかわからない。ただ、逃げられないだけなのかもしれない。
わたしは、待っていてほしいと願っているだけだった。
いつものルートで校舎に入り、靴下で階段をのぼっていく。
音楽室の前に着いた。深呼吸してから、ノックをした。
青の音が止まる。かちゃりと扉が開いた。
「悠誠くん……」
「いらっしゃい、瑠衣ちゃん」
悠誠くんは、何も変わらずに微笑んでいる。あの、二十三年前のあの写真と、何も変わらなかった。
「こんばんは、悠誠くん」
わたしは笑顔で答えた。



