わたしは、はだしのまま、学校の外に出る。門を曲がったところで、わたしは立ち尽くす。
 意味がわからない。
 悠誠くんが死んでいるなんて。到底受け入れられる話ではない。
 では、わたしが今まで会っていたのは、誰なのだ。
 同時に、わたしは思い当たることが、泡のように頭に浮かんでいた。
 妙に大人びた考え方や話し方。
 タブレット端末を使えなかったこと。
 六月も後半に差し掛かるのに、ずっと詰襟でいること。
 夜中にバイオリンを弾いていること。
 違和感はたくさんあった。わたしが見ないふりをしてきただけだ。
 足が痛い。わたしは、手提げから草履を出して履いた。
 カラカラと音を立てて歩く。学校に向かっていたとき、まさかこんなことになろうとは、思いもしなかった。
 力なく、足を引きずるように歩く。全身が重い。
 家に帰ると、自室に逃げ込む。わたしは、声を殺して泣いた。
 失恋したのかすら、わからない。
 わたしの気持ちは、迷宮に入り込んでしまった。

 翌日の日曜日、雨が降っていた。わたしは、家のデスクで淡々と勉強をした。
 悠誠くんのことを考えないようにしようと、数式で、英単語で、年号で、国名で、頭をいっぱいにした。