何時間も経ったかのように感じた。実際は、数秒程度だったのだろう。
 わたしは、翔太郎からの告白に動けなくなっていた。
 翔太郎がわたしのことを好き? この出来損ないで、子供っぽいわたしのことが?
 理解したとき、顔が沸騰するかと思うほど熱くなる。
「そ、そんなの、いきなり言われてもわかんないよ!」
「ずっと好きだったのに、どうすれば良いのかわからなくて……俺だってどうすれば良いのかわかんねぇよ!」
「何を逆ギレしているの!」
 端から見たら、喧嘩しているようにしか見えないだろう。わたしも翔太郎も冷静ではなかった。
 今、答えを出してはいけない。それだけはわかっていた。
「か、考えるから、時間をちょうだい」
 煮込まれたスープのような頭から、言葉を引きずり出した。
「わかった。急にごめん」
 翔太郎は、すぐに了承した。
「わ、わたし、先帰る!」
 踵を返して、わたしは走り出した。
 わけがわからない!

 気がついたら、学校に来ていた。今は、夜の九時半。いつもより早い時間だ。
 しかし、音楽室には明かりがついていて、青の音がところどころ漏れ聞こえていた。
 お母さんに、自習室で勉強するから遅くなると、嘘の連絡を入れる。わたしは、裏門に回った。