わたしは、翌日の日曜日から、中学一年生の単元からやり直すことにした。まずは、数学。
 当時はちんぷんかんぷんで、その場のカンだけで解いていた問題の説明を改めて読むと、すとんと腑に落ちる。中学二年生まで進んだおかげで、理解しやすくなっているのだろう。
 最初のページからスワイプして解いていくと、当時、わからないまま放置して、見なかったことにした問題たちがわんさか出てきた。自分で自分が悲しくなる。
 そして、解き直してみると、わたしの理解と不一致であることに気づく。
 一つ一つ、丁寧に解き直していく。
 今日は塾の講義がない。没頭していたら、いつの間にか、夕飯の時間になっていた。

 わからないところは、塾の先生や、澪や翔太郎に聞く。澪は驚いていたが、英語が得意な澪は、わたしの苦手な文法もわかりやすく教えてくれた。
 家で勉強に詰まったときは、お兄ちゃんにも聞いた。
 基礎ができあがっていく感覚を覚える。
 まだ、授業でやっている単元まで追いつけていないから、劇的に点数が上がるということはなかったが、小テストの点数は、じわじわと上昇していた。
 お父さんとお母さんは、まだわたしのことで喧嘩をしているが、集中して勉強をしていることを察してか、喧嘩の回数が減ったように思う。
 単元のやり直しを終えるまで、わたしは悠誠くんに会うことを自ら禁じていていた。
 悠誠くんの連絡先を聞かなかったことを後悔したが、知っていればスマートフォンが気になって集中できなかっただろう。
 これを全部やり直したら、ご褒美に悠誠くんにバイオリンを弾いてもらうんだ。
 それを目標に、わたしは中学一年生からのやり直しに集中した。

 いつの間にか約三週間が経って、六月に入っていた。