タブレット端末の光が目に痛い。
「ここの助動詞はここの動詞にかかってくる。だから……」
 英語の早川(はやかわ)先生がガナリ声を上げながら、テキストが映し出された電子黒板にペンシルで書き込みをしていく。その内容は、わたしの手元のタブレット端末にも同時に流れてくる。
 わたしが通っている塾では、ICT教育というのに力を入れているらしく、授業中に紙のノートにメモを取ることはほぼない。
「ここで関係代名詞! するとこちらの文から訳していくから……」
 早川先生は、良い先生だと思う。赤い声に本気を感じる。四十代くらいだろうか。最近髪が寂しくなってきていることをいじられないのは、生徒たちから好かれている証拠だろう。
 電子黒板の内容が問題に変わる。わたしのタブレット端末にも問題が出された。
「では、この文の和訳をやってみよう。時間は……三分!」
 画面右下に小さなタイマーが表示される。
「スタート!」
 わたしは、順番に文章を目で追っていく。ああ、これは違う。こっちからだ。
 タイマーが進む。脇にじんわりと汗を感じる。
「はい、終了!」
 結局、三つほどの文章の一文目しか解けなかった。もしかしたら、次の模試はもっと低い結果になるかもしれない。
 暗澹(あんたん)たる気持ちで、授業を聴く。もう、頭には、入っていなかった。