生きることは、決して簡単じゃない。
どんなに手を伸ばしても届かないものがある。
どんなに願っても、救えないものがある。
でも、それでも。
傷ついても、迷っても、また歩き出せるのなら。
――それは、きっと。
✦
「なあ、澪翔。お前、本当にいいのか?」
夕焼けに染まる帰り道で、遥矢が問いかけた。
「……何が?」
「今までみたいに、全部笑ってごまかすの、やめるんだろ?」
澪翔は立ち止まり、少しだけ空を仰ぐ。
焼けるようなオレンジ色が、まるで燃え尽きる前の灯火みたいだった。
「……もう、無理して笑うのはやめた」
小さく息をつく。
「俺はずっと、一人でいるほうが楽だと思ってた。誰とも深く関わらなければ、傷つくこともないって。でも、それじゃあ本当の意味で生きてることにならないんだって……アイツらが教えてくれた」
アイツら。
汐音と、紬葵。
どこかぎこちなくて、不器用で、でもまっすぐに向き合ってくれた二人。
「澪翔」
背後から呼ばれて、振り返る。
汐音だった。
風に揺れる髪。
少しだけ息を弾ませながら、まっすぐにこちらを見つめている。
「……どうした?」
「……」
汐音は何かを言いたそうにして、唇を噛んだ。
迷っているのが分かった。
いつもなら、このまま立ち去る。
関わり合いを避ける。
でも。
「……手を、伸ばしてもいい?」
澪翔の目が、わずかに揺れた。
汐音が、自分から。
迷いながらも、恐れながらも。
それでも。
――繋がろうとしている。
澪翔は、静かに笑った。
「遅ぇよ、バカ」
言いながら、その手を取る。
汐音の手は、少しだけ震えていた。
✦
「……バカみたいに泣くなよ、葵」
澪翔が呆れたように笑う。
「だって……」
紬葵は、大粒の涙を零しながら言った。
「こんなふうに、誰かと笑い合えるなんて、思ってなかった……」
昔。
守れなかったものがある。
失ったものがある。
だからこそ、怖かった。
でも、それでも。
「友達になってくれて、ありがとう」
涙に滲んだ笑顔。
「……バカ」
汐音が、小さく呟いた。
優しい声で。
✦
この世界は、決して優しくない。
でも。
それでも、きみに出会えた。
この絆を、大切にしたいと思った。
だから。
「……これからも、一緒にいてくれる?」
澪翔の問いに、汐音と紬葵は。
何も言わずに、ただ頷いた。
それが、何よりも確かな答えだった。
✦
壊れかけの世界で。
それでも、手を伸ばせば。
また、繋がることができる。
そう信じられるなら。
――きみに出会えて、よかった。
どんなに手を伸ばしても届かないものがある。
どんなに願っても、救えないものがある。
でも、それでも。
傷ついても、迷っても、また歩き出せるのなら。
――それは、きっと。
✦
「なあ、澪翔。お前、本当にいいのか?」
夕焼けに染まる帰り道で、遥矢が問いかけた。
「……何が?」
「今までみたいに、全部笑ってごまかすの、やめるんだろ?」
澪翔は立ち止まり、少しだけ空を仰ぐ。
焼けるようなオレンジ色が、まるで燃え尽きる前の灯火みたいだった。
「……もう、無理して笑うのはやめた」
小さく息をつく。
「俺はずっと、一人でいるほうが楽だと思ってた。誰とも深く関わらなければ、傷つくこともないって。でも、それじゃあ本当の意味で生きてることにならないんだって……アイツらが教えてくれた」
アイツら。
汐音と、紬葵。
どこかぎこちなくて、不器用で、でもまっすぐに向き合ってくれた二人。
「澪翔」
背後から呼ばれて、振り返る。
汐音だった。
風に揺れる髪。
少しだけ息を弾ませながら、まっすぐにこちらを見つめている。
「……どうした?」
「……」
汐音は何かを言いたそうにして、唇を噛んだ。
迷っているのが分かった。
いつもなら、このまま立ち去る。
関わり合いを避ける。
でも。
「……手を、伸ばしてもいい?」
澪翔の目が、わずかに揺れた。
汐音が、自分から。
迷いながらも、恐れながらも。
それでも。
――繋がろうとしている。
澪翔は、静かに笑った。
「遅ぇよ、バカ」
言いながら、その手を取る。
汐音の手は、少しだけ震えていた。
✦
「……バカみたいに泣くなよ、葵」
澪翔が呆れたように笑う。
「だって……」
紬葵は、大粒の涙を零しながら言った。
「こんなふうに、誰かと笑い合えるなんて、思ってなかった……」
昔。
守れなかったものがある。
失ったものがある。
だからこそ、怖かった。
でも、それでも。
「友達になってくれて、ありがとう」
涙に滲んだ笑顔。
「……バカ」
汐音が、小さく呟いた。
優しい声で。
✦
この世界は、決して優しくない。
でも。
それでも、きみに出会えた。
この絆を、大切にしたいと思った。
だから。
「……これからも、一緒にいてくれる?」
澪翔の問いに、汐音と紬葵は。
何も言わずに、ただ頷いた。
それが、何よりも確かな答えだった。
✦
壊れかけの世界で。
それでも、手を伸ばせば。
また、繋がることができる。
そう信じられるなら。
――きみに出会えて、よかった。



