「もう一度、その写真を見てください！」

少女が手元を覗きこみ、鋭く指差した。

「いいですか？　この写真は、瑞夏さんが今から五分後にここを通りかかって、左から来るこのトラックにはねられるっていう未来を、全部正確に映してるんです！　ナンバーも同じ、トラックの角度も、奥に青い車がいるのも。瑞夏さんが踏み出すタイミングまで、全部！」

あまりの勢いに、頭の中で言葉をなぞる。――松野が、事故に？

「え？　でも、未来予知なんて……そんなの、あるわけ……」

「瑞夏さんが死んじゃってもいいんですか！！　ばかぁ！！」

突然の大声が僕の耳を震わせた。

「――わかったよ」

初対面で「ばか」と叫ぶ彼女の剣幕に圧倒され、僕はよろけるように駐車場を飛び出す。正直、信じきれたわけじゃない。だけど、彼女の真剣な目と、「死んでもいいのか」という言葉が胸の奥に刺さって、じっとしていられなかった。

「この道は……ええと……」

「ご存じないですか？」

「いや、知ってる。でも通学路じゃないから、普段は通らなくて……」

そう言いながら、僕は松野が走っていった方へと駆け出す。少女もすぐ横に並んでついてくる。セーラーの旧制服に大きめのカーディガン。走って暑くないのか、そんなことがふと頭をよぎる。

西日がまぶしい。手で遮りながら、隣を走る彼女に尋ねた。

「君は……？」

少女は走りながら、短く名乗った。

「――わたしは和歌子です」

「和歌子ちゃん？　君はいったい……」

僕の問いに、彼女はぽつりと答える。

「歌扇野高校の――座敷わらしです」

＊