おそるおそる首を動かし、横を見る。目が合ったその子は、くりくりとした瞳で僕を見つめ、ふっと笑った。僕の体に、同い年くらいの女の子が抱きついている。
「ちょっと……!」
かすれた声に、少女はひょいっと身を引いた。切り揃えられたおかっぱ頭に、銀色のクローバー型の髪飾り。小柄で、見覚えのない制服を着ていた。季節外れの冬服に、袖の余ったカーディガンまで羽織っている。
夕焼け色の光に包まれながら、彼女は口を開いた。
「――うまくチカラが共鳴したみたいですね」
カーディガンの隙間から見えたバッジには「歌高」の校章。僕たちと同じ、歌扇野高校のものだった。でも、制服は見慣れない。昔のデザイン? なぜ彼女がそれを着ているのか分からなかった。
光がゆっくりと消えていく中、僕は戸惑いながら助けを求めるように松野を見る。けれど彼女は少女に気づいていないようだった。顔を伏せ、右腕を反対の手で押さえながらつぶやく。
「ごめん! やっぱりなんでもない! 急に呼び止めちゃって……ごめん」
松野はそう言うと身をひるがえし、店の入り口に向かって走った。
「あ、ちょっと――」
僕は反射的に追いかける。
「――どうしたの?」
問いかけに、彼女はうろたえながら言った。
「ちょ、ちょっと買い物に……! えっと、そう、お店の備品を頼まれてて……!」
自動ドアをすり抜け、バッグで顔を隠しながら駐車場を駆け抜ける。
「……急いでるから、ごめん!」
そう言って、彼女は夕陽の中に消えた。僕は追いかけて外へ出る。まぶしい西日に手をかざし、視線を走らせたが、もう松野の姿はなかった。
「ちょっと……!」
かすれた声に、少女はひょいっと身を引いた。切り揃えられたおかっぱ頭に、銀色のクローバー型の髪飾り。小柄で、見覚えのない制服を着ていた。季節外れの冬服に、袖の余ったカーディガンまで羽織っている。
夕焼け色の光に包まれながら、彼女は口を開いた。
「――うまくチカラが共鳴したみたいですね」
カーディガンの隙間から見えたバッジには「歌高」の校章。僕たちと同じ、歌扇野高校のものだった。でも、制服は見慣れない。昔のデザイン? なぜ彼女がそれを着ているのか分からなかった。
光がゆっくりと消えていく中、僕は戸惑いながら助けを求めるように松野を見る。けれど彼女は少女に気づいていないようだった。顔を伏せ、右腕を反対の手で押さえながらつぶやく。
「ごめん! やっぱりなんでもない! 急に呼び止めちゃって……ごめん」
松野はそう言うと身をひるがえし、店の入り口に向かって走った。
「あ、ちょっと――」
僕は反射的に追いかける。
「――どうしたの?」
問いかけに、彼女はうろたえながら言った。
「ちょ、ちょっと買い物に……! えっと、そう、お店の備品を頼まれてて……!」
自動ドアをすり抜け、バッグで顔を隠しながら駐車場を駆け抜ける。
「……急いでるから、ごめん!」
そう言って、彼女は夕陽の中に消えた。僕は追いかけて外へ出る。まぶしい西日に手をかざし、視線を走らせたが、もう松野の姿はなかった。


