――学校からの帰り道。
彼は駅方面まで自転車を押して、私はその隣を歩く。
恋愛テスト期間中は自転車通学をしていたけど、普段は電車通学者。
試練は本当に辛かった。彼は弱音を吐くことを目論んでいたと思うけど、私は最後まで負けずに踏ん張り続けた。あのときにチャンスを与えてもらったから、お互い心の距離が近づけたんだと思う。いまとなっては最高に素敵な思い出に。
「あのさ、質問があるんだけど」
彼が珍しく赤面しながらそう言ったので、私は「ん、なぁに?」と顔を横に向ける。
「いまの俺のどんなところが好き?」
「えっ」
「この前は好きなところが三つ以上あったから、あれからもう少し増えたのかなぁ〜って」
「あはっ、あはははっ!! その通り! いっぱいあるよ。聞きたい?」
「ま、まぁな……」
彼はそう言うと、太陽のように真っ赤に頬を染めた。
普段は生意気な口を叩いてるくせに、本当は最大級のかまってちゃん。
彼が与えてきた試練を振り返れば、置き去りにしてしまった青春の穴埋めをするかのようだった。
彼は人に興味がないわけじゃなくて、自分のことをしっかり見てほしい人。
それは私も同じ。
ミス城之内のマネキンじゃなくて、残念な中身もちゃんと見てほしい。
だから私は、期待以上の好きを届けて彼の顔を恋の色に染めた。
【完】



