その夜、店を出る美咲美は、ふと立ち止まり、振り返った。
「ねえ、悠慎。」
「…なんだ。」
「あなたの料理が好きよ。」
悠慎は、それを聞きながら静かに言った。
「…なら、また来い。」
美咲美は微笑み、軽く手を振る。
「もちろんよ。」
そして、夜の街へと消えていった。
悠慎は、静かに店の引き戸を閉める。
その仕草には、もう迷いはなかった。
彼は、彼女がここにいることを受け入れた。
そして、彼の料理は、これからも彼女のために作られる。
それが、二人の確かな答えだった。
――彼らの関係は、もう「ただの客と店主」ではなかった。