「ねえ、悠慎。」
「…なんだ。」
「私がいなくなったら、どうする?」
「…またそれか。」
「ふふ、気になるのよ。」
悠慎は短く息をついた。そして、ゆっくりと美咲美を見つめる。
「…お前が勝手に決めることだ。」
「そうね。」
美咲美は、満足そうに微笑んだ。
そして、そっと盃を置く。
「でもね、私はあなたがいる限り、ここに来るわよ。」
悠慎は、微かに目を細めた。
「…勝手にしろ。」
その声は、どこか柔らかかった。
美咲美は、その変化を見逃さなかった。
彼はもう、彼女が「ここにいること」を受け入れている。
それが、何よりも確かな答えだった。
――二人の距離は、もう戻れないほど近づいていた。