「…何が言いたい。」
悠慎は静かに問い返す。
美咲美は盃を指でなぞりながら、ゆっくりと口を開いた。
「もし、私が明日から突然ここに来なくなったら、あなたはどうするの?」
「…。」
「私がいなくなったら、あなたは何も変わらない?」
悠慎は、すぐに答えられなかった。
彼女がいなくなったら――
変わらないはずだった日常が、何かを失うような気がした。
だが、それを言葉にするのは簡単ではない。
悠慎は、ゆっくりと湯飲みを手に取った。
「…お前がどうしようと、俺の店は変わらない。」
「そう。」
美咲美は、何かを確かめるように頷いた。
「じゃあ、私は好きにするわ。」
悠慎は、それ以上何も言わなかった。