「ねえ、悠慎。」
「…なんだ。」
「もし、あなたが私を必要としてるなら、言ってくれる?」
悠慎はその言葉を聞き、わずかに目を細めた。
「…考えたこともない。」
「ふふ、そうね。でも、私にはわかるわよ。」
美咲美は微笑みながら、そっと箸を置いた。
「あなた、もう私を手放せないわよ。」
悠慎は何も言わなかった。
けれど、その夜の料理は、今までで一番優しい味がした。
――二人の距離は、もう戻れないところまで近づいていた。