その夜、店を出た美咲美は、しとしとと降る雨の中、しばらく立ち止まっていた。
悠慎は、いつものように「また来るのか」とも言わず、ただ彼女が去るのを見送った。しかし、美咲美はふと振り返り、言った。
「ねえ、悠慎。」
「…なんだ。」
「私、これからもここに来るわ。」
「…。」
「あなたがいなくならない限り、私は通う。」
悠慎は、ほんのわずかに目を見開いた。それから、ごく短く「勝手にしろ」と呟いた。
美咲美は満足そうに微笑み、傘をさして去っていった。
悠慎はその背中を見つめながら、ゆっくりと店の引き戸を閉めた。
それが、彼らの静かな約束になった。
――二人の距離は、確かに少しずつ縮まっている。
悠慎は、いつものように「また来るのか」とも言わず、ただ彼女が去るのを見送った。しかし、美咲美はふと振り返り、言った。
「ねえ、悠慎。」
「…なんだ。」
「私、これからもここに来るわ。」
「…。」
「あなたがいなくならない限り、私は通う。」
悠慎は、ほんのわずかに目を見開いた。それから、ごく短く「勝手にしろ」と呟いた。
美咲美は満足そうに微笑み、傘をさして去っていった。
悠慎はその背中を見つめながら、ゆっくりと店の引き戸を閉めた。
それが、彼らの静かな約束になった。
――二人の距離は、確かに少しずつ縮まっている。



