あたしが、あんたを拾ってあげる。


こんなやつ絶対好きにならないけどな。

急いで前居たホテルの前まで行くと、彼女は待っていた。

「遅い」

「仕方ないだろ家で寝てたんだから」

また初めに会った時みたいなピンクのカツラで、ツインテールをしていた。

キメキメのメイクで、目元をキラキラ輝かせていた。

「今からデートしまーす」

「は?ホテルは」

「やっぱヤることしか考えてないじゃん、あたしら付き合ったんだからさ、デートしよーよ。最後はお楽しみにってことで」

彼女は、韓国雑貨屋みたいな所に入って、キーホルダーやステッカーを眺めていた。


「ねぇ、これ買ってきてい?」

そのフレーズを聞いてくる女、過去にいたな。

「あ、聞いてごめん、買ってくるから外で待ってて」

彼女はステッカー6枚とキーホルダー二つ買っていた。

「スマホ貸して」

そう言って僕のスマートフォンを渡すと、先程買ったうさぎのステッカーを貼った。

「勝手に貼るなよ」

「んーー、まよけ?みたいな?」

「なんだよそれ」

「じゃ、ホテル戻るか〜」

「そうしようぜ」

そう言って、またホテルに向かった。

「じゃ解散で」

「は?やらないの」

「その本気で猿みたいなの辞めてくんない?」

「何にそんなに執着してるの。でもまあ、わかるよ、逃げられそうになった獲物を捕まえる気持ちは。あたしもフライドチキンが歩いて逃げようとしたら追いかけるもん」

「なんだそれ、俺はただ」

「あ、俺はっていってる。本性出してきたな?」

「お前聞き出すの上手いな」

「まぁ、まぁ、まかせなさいよ。あたし、なんでも知ってるから。手相見れるよ。占ってあげよっか」


「いい。」

「いいじゃん!やろうよ、貸してみ」

「こんな入口の前でやるな!部屋入ってからにしろよ」

「あー、そうでした。てへ」

速やかにホテルに入った俺たちは、入ってまずしたことは、手相占いだった。

「お兄さん、大学生の時、大恋愛しましたね?」

「なんでそんなこと分かるんだよ、嘘だろそんなことないぞ」

「そっかぁ。ハズレか」

本当は当たってた。

その頃の話は頭の中から消したかった。

本気で好きだった女。

唯一、好きになれた女。

なんでも許可なしに行動できなくて、いちいち聞いてきて、初めはウザかったけど、それが何だか可愛くなって。

「何考えてんの?あんた」

「なぁ、、俺のこと彼氏にしたのなんでだよ」

「それは、あんたその辺の女抱きまくってて飽きてそうだなーって思って」

「正直飽きてたな」



「ねぇ、しよっか」

カツラを外して、髪を整えると、そう口にした。

それが合図。

甘えた声、優しさを求め、時に激しさを求め、正直、可愛かった。

振り回されすぎて、困ってたけど。

こういう振り回され方なら全然アリ。

「んっ………そうたっ、…」


びっくりした。急に俺の名前言うもんだから、焦った。

キュっとしがみついてくる感じがたまらなく好き。

体の相性は本当に良いらしい。

「あー、終わったなー」

「そのやってる時のキャラ作りなんなの?」

「盛り上がるかなって思って?可愛いっしょ」

「めちゃめちゃ可愛いです」

「素直でよろしい」

「普段もそうならいいのに」

「昔はあんなだったよ、でも元彼に振られてから変わったんだよね」

「こんな体の締まりいい女中々居ないぞ」

「そんときはちょっと違ったからもう少し肉あって」

「痩せたの?凄いじゃん」

「そんな急に褒められると思ってなくてびっくりした」

「素でも可愛いとこもあんじゃん」

「うっさいっ!」

「あ、照れてる、フッおもしれー女」

待てよ?
「どこで俺の名前知った?」

「あ〜、名前呼んでた?あ、、そうそう連絡先交換手伝ったでしょ、それで」

「連絡先な、確かに書いてあるわ」

2日目にして、この女のことを知りたいと思い始めた。
言動が面白くて、笑える。

こいつといると、昔の自分思い出すな。

もっとキラキラした世界にいたっけ。

今は醜くて、底辺みたいなとこにいる気がする。

人として最低なのはわかってる。

過去の恋愛を引きずって、幸せだったなぁって浸ってしまう。

「おい、猿」

「なんだよ、猿って呼ぶなよ」

「適した言葉じゃん」

「うるせえな」

「っくくく、……何この会話」

「お前が始めたんだろ」

「お前じゃなくてユウカね、今ここで覚えて」

「名前なら、……もう覚えたよ、初めて名前を目にしてから」

「えっ?やるじゃん、意外と記憶力いいんだね」

「いろんなやつ抱いてきたからな、名前は覚えるの基本中の基本」

「クズにもルールとかあるんだな」

「刺されてもおかしくないからな、守らないと」

「でも、もうあたしだけだから、尽くせよ」

「へいへい」

「あんたが離れられなくなるぐらいには、愛してもらわないと」

そう言いながら、彼女はタバコを吸っていた。

愛情なんてものはないけど、そこら辺の穴より、全然面白くて良い。

付き合ってて飽きない。

振り回されるのはゴメンだけど。

でもなんだか、振り回されるのも慣れてきた。

癖になりそうな…。

ユウカとの出会いから俺の人生は変わった。

いつ振りだっけ。こんなに楽しいと思えるのは。

「ソウタは、タバコ吸わないの?」

「昔は吸ってた。20歳になった途端お酒とたばこ試して、見事にはまった」

「そう、なんだ。なんで今は吸ってないんだ?」

「彼女がいたんだ。当時」

なぜか、ユウカには話そうと思えた。

今まで過去のことを語るのは避けてきたんだけど。

なぜだろう。