あたしが、あんたを拾ってあげる。



今までで最上位レベルに体の相性が良くて気持ちがいい。

体を抱きしめられる感覚も嫌じゃない。

手を恋人繋ぎして、握りしめる感じも良い。

これで好きになれたら1番幸せなんだろうな。

「んっ………」

でももう、女をすきになることは無い。

最初で最後の恋愛をもう経験したから。

「もっと、……触れて」

頬にそっと触れてから、優しく頭を撫でる。

そんなことが伝わったのかと思うぐらいに、滴る濡れた髪からの雫が頬に女の涙のように落ちる。

泣いているように見えたのは気のせいじゃなくて、本当に泣いていた。


「本当ずるい、やっぱり覚えてないんだね、私の事」

「さっきの入口で別れたやつだろ?覚えてるよ」


「そっか、ならよかった………」
女は悲しそうに笑った。

すると急に穴は豹変した。
「なーんて、ガハハハハハハハハお前バカだな!」

この聞き覚えのあるハスキーな声は、さっきの試供品野郎。

「カツラとってアイメイクとハイライトシェーリング変えただけで、さっきの真似したら騙されてんのマジでウケる」

「………っは?」

一瞬理解が出来なかった。

今ヤってた穴は、さっきのギャル??

頭が追いつかない。


「お前、さっきの女なの?」

「やっと、女扱いしてくれたな」

「いいんだよそんなことは」

「本当、バカだなあんた。女の顔なんてろくに覚えてない。てか前髪で気づけよ。あたし前髪ぱっつんじゃなくて、斜めに片方おんまゆで切ってんの」

「覚える価値なんてないだろ」

「どうしてそうなっちゃったの?あたしが聞いてあげよっか」

「お前に話すことなんてない。その、成り行きってやつ」

「まぁ、今日からあたしの彼氏だから、浮気したら罰金な」

「は?無理なんだけど、誰が付き合うかよ」

「体気持ちよかったっしょ?いつでも呼んでやるから」

そう言いながらタバコを吸う女は、いつの間にか全裸だったのが下着を付けていた。


「もう1回」

「あ?」

ベットに寝転びながら彼女は口開いた。

「もう1回ヤらせてくれるなら、付き合ってもいい」

「じゃあ決まりだ。ヤろうぜ」

寝転んでいた彼女のところに、腕を引っ張られ乗っかった瞬間に、彼女はさっきのキャラを演じ始めた。


二回戦をする時は、またさっきの貧弱そうなキャラになりきっているらしい。
「んっ……んん…、」
漏れる声だけは本当なのかなってちょっと感じたり。
何が本当で、何が演技なのか、女は分からない。
女はよく演技してるとか言うし、本当のことは本人にしか分からない。
でもその演技のおかげで、盛り上がるのは間違いない。
こういう華奢な体で胸が大きくて、意外とタイプなんだよな。
抱き合う時の甘い声は可愛いんだよな、こいつ。

全力でヤッてるみたい。

身体の相性もいいし、関係を続けるのはアリかもしれない。

ただ、性格がぶつかりすぎるだろ。

この演じられたキャラならまだいいんだけど。

「じゃ、また連絡するから」

それから一週間後の土曜日、電話がかかって来た。

登録した覚えのないユウカからの着信。


「もしもし」

「いまどこ?この前のホテル来て。私も今から行く」

前のホテルの場所まで、30分位だったからそれを伝えようと思ったんだけど、切れてしまった電話。

もっと人の話聞けよ。


でも、体の相性良いしな。

そう思うと割り切れた。