智哉と美理の関係は、少しずつ変化していった。これまでお互いに持っていた不安や疑念が少しずつ解消され、二人はより自然体で接することができるようになってきた。しかし、その変化の裏には、まだお互いに向き合わなければならない心の葛藤が残っていた。
その日、智哉は美理と一緒に学外のイベントに参加することになった。普段は静かで控えめな智哉だが、美理と一緒にいると、なぜか自分の中で何かが解放されていくような気がしていた。美理はいつも通り、落ち着いて周囲に気配りをしながら、智哉に対しても穏やかに接していた。
イベントの準備が整い、智哉と美理はしばらく一緒に過ごす時間を楽しんでいた。その間、智哉は美理に対して、少しずつ自分の気持ちを表現できるようになっていることを感じていた。しかし、その一方で、彼の中にはまだ不安が残っていた。美理は優しくて、どこまでも自分を受け入れてくれるような存在だが、智哉はどうしても自分に自信を持てなかった。
「美理さん、なんだか君と一緒にいると、安心するよ。」
智哉は少し恥ずかしそうに、でも心からそう言った。美理は微笑みながら彼を見つめた。
「そう言ってもらえると、嬉しいです。智哉さんも、もっと自信を持っていいと思いますよ。」
その言葉に、智哉は少し驚きながらも、どこか安心感を感じた。美理の言葉には、いつもどこか優しさと深さがある。智哉は、そんな美理に対してどうしても甘えてしまいたくなる自分がいた。
「でも、僕にはまだ…自分を変えることができるのか分からないんだ。」
智哉は少し躊躇いながら続けた。その言葉に、美理は静かに頷き、優しく答えた。
「無理に変わらなくてもいいんですよ。智哉さんがそのままでいることが、私はとても素敵だと思います。」
その言葉に、智哉はまた少し驚いた。美理は、智哉が変わらなくても、彼の本当の姿を受け入れてくれると言ってくれている。智哉はその気持ちが温かくて、どこか嬉しく感じた。
「でも、僕はまだ何か足りない気がして…」
「足りないことなんてないですよ。智哉さんは、十分に素敵な人です。」
美理は力強く言った。その言葉に、智哉は少しだけ胸が熱くなるのを感じた。
「ありがとう、美理さん。」
智哉は心から感謝の気持ちを伝えた。美理の優しさに触れるたび、智哉は少しずつ自分を受け入れることができるようになってきていると感じた。そして、美理もまた、智哉の成長を見守りながら、自分自身の心と向き合わせる時間を過ごしているのだろうと、智哉は思った。
その後、二人はイベントの準備を終え、夜になった。会場での時間を楽しみながら、智哉と美理は自然と歩調を合わせて歩くことができるようになった。彼らの関係は、少しずつ成長し、二人はお互いの存在を大切に思い合うようになっていた。
帰り道、智哉は少し美理に話しかけた。
「美理さん、これからもっといろんなことを知りたいと思ってる。でも、僕にとって怖いのは…本当に自分の気持ちを大切にできるかどうかなんだ。」
美理はその言葉を受け止め、しばらく黙って考えてから答えた。
「気持ちを大切にすることは、簡単なことではないけれど、智哉さんがその気持ちを大事にしていくことで、きっと未来が広がると思います。」
その言葉に、智哉は深く頷いた。そして、心の中で誓った。
「美理さんと一緒にいることで、少しずつでも自分を変えていきたい。そして、君ともっと深く理解し合いたい。」
美理は静かに微笑みながら、智哉の言葉を静かに受け止めた。
「私も、智哉さんと一緒に成長していきたいです。」
二人はそのまま歩きながら、言葉少なにお互いの存在を感じていた。智哉は美理との未来を少しずつ描いていくことを決意し、また一歩、自分らしく進んでいく覚悟を決めた。

第4章終