気が付くと、二人はどこか見知らぬ場所に立っていた。周囲は濃い霧で覆われ、視界はほとんどなかった。地面は砂のように柔らかく、足元がふらつく。遠くで不気味な風の音が聞こえ、冷たい空気が肌を刺す。
「ここ……どこなの？」
琴乃が不安げに呟いた。
「試練の場所だろうな。でも、どうやって進めばいいんだ？」
幹太が周囲を見回すと、霧の中から低い声が響いた。
「よく来た、選ばれし者たちよ。」
二人は驚き、声のする方を振り返る。そこには巨大な影が立っていた。人間のような形をしているが、全身が霧で構成されているようで、実体があるのかどうかすら分からない。その目は赤く輝き、冷たい威圧感を放っていた。
「私は門神。この地を守る存在だ。」
霧の影――門神が静かに語りかける。
「試練に挑む覚悟があるのならば、力を示せ。そして選べ。暴力で道を切り開くか、平和を以て困難を乗り越えるか。」
「暴力か平和……？」
幹太が眉をひそめて尋ねた。
「その選択はお前たちの心の在り方を映すだろう。選択が間違えば、お前たちはここで永遠に霧に閉じ込められる。」
琴乃は固く唇を結び、幹太を見た。その視線には「どうする？」という無言の問いが込められている。
「俺たちは……」
幹太は一瞬迷ったが、すぐに力強く答えた。
「どちらか一方だけじゃなく、両方で試練を突破する。暴力だけでも平和だけでもなく、俺たちのやり方でやる！」
門神はしばらく黙り込んだ後、不気味な笑みを浮かべたように見えた。
「よかろう。ならば進むがいい。最初の試練が待っている。」