村の広場には十数人の住民が集まっていた。皆が幹太たちを珍しそうに見ている。中には警戒心を隠さない者もいれば、興味津々の様子で近づいてくる者もいた。
「ここに来る奴なんて久しぶりだ。」
槍の男が呟く。
「お前ら、霧の秘宝を探しに来たんだろう?」
その言葉に幹太は驚いた表情を見せたが、琴乃が冷静に問い返した。
「霧の秘宝……それは一体何ですか?」
村人たちがざわめき始めた。その中から一人の老婆が前に出てきた。彼女の顔には深い皺が刻まれ、その目はまるで全てを見通すような鋭さを持っていた。
「霧の秘宝は、この村を救う唯一の希望だ。しかし、それを手にするには『門神』の試練を越えねばならん。」
「門神……?」
琴乃が眉をひそめる。
「門の守護者さ。暴力と平和、どちらを選ぶかで秘宝の形が変わると言われておる。」
老婆の言葉に、幹太は無意識に拳を握りしめた。これが手紙に書かれていた内容と関係しているのは明らかだった。
「俺たちがその試練に挑めば、秘宝を手に入れることができるのか?」
幹太の問いに、老婆は静かに頷いた。
「だが、試練に挑む者の多くは帰ってこない。それでも行くのか?」
幹太と琴乃は顔を見合わせた。瑞道の行方を知るため、この試練を避けるわけにはいかなかった。
「俺たち、行きます。」
幹太の声は迷いのないものだった。琴乃もまた、力強く頷いた。