門の中に入ると、世界は一変した。そこは濃い霧に覆われた異世界だった。幹太と琴乃は、何も見えない中を慎重に進んだ。空気は冷たく、足元には柔らかな草の感触があった。霧の向こうからはかすかな風の音が聞こえ、どこか遠くに鐘のような音色も響いていた。
「ここ、本当にどこなんだろう……。」
琴乃が声を潜めて言う。
「さあな。でも、門を抜けた瞬間から、俺たちはもう別の世界に来た気がする。」
幹太の声には興奮が混じっていた。
霧の中を進むと、やがて小さな村のような場所にたどり着いた。木造の家々が立ち並び、人々の姿が見える。だがその雰囲気はどこか暗く、住民たちの顔には不安の影が漂っていた。
「おい、あんたたち、こんなところで何してる？」
声をかけてきたのは、鎧を着た中年の男だった。無骨な槍を持ち、二人を鋭く睨んでいる。
「えっと……ここは？」
幹太が恐る恐る聞くと、男は少し驚いたような顔をしてから言った。
「ここは『星霧の村』。お前ら、外の世界から来たのか？」
その言葉に、幹太と琴乃は顔を見合わせた。この村の名前も、外の世界という言葉も初めて耳にするものだった。