人影は幹太に向かって鋭い動きを見せた。幹太は咄嗟に石ころを拾い、相手に投げつける。しかし、影に当たった瞬間、それは霧のように消え、すぐに再び形を作る。
「効かない……！？」
幹太は息を呑んだ。
「待って、攻撃は逆効果かもしれない！」
琴乃が叫ぶ。
しかし、影たちは幹太と琴乃を包囲し、次々と襲いかかってくる。幹太は影を避けながら必死に考えた。これまでの試練で感じた違和感――それは、ただ戦うだけでは解決しないという事実だった。
「琴乃！ 話してみるんだ！」
幹太が叫ぶと、琴乃は恐る恐る影に向かって声をかけた。
「私たちは争いに来たんじゃない！ あなたたちが何を守ろうとしているのか、教えて！」
影たちは一瞬動きを止めた。その沈黙が何を意味するのか、二人には分からなかったが、続けるしかなかった。
「秘宝を手にするには、ただ力を示せばいいの？」
琴乃の声が静かに響く。その言葉に、影たちはゆっくりと霧に戻り、台座の周りから消え去った。