中に入ると、途端に霧が立ち込めた。建物の内部は広く、中央には丸い石の台座があり、その上には古びた宝箱が置かれていた。しかし、台座の周りには薄い霧が揺らめいており、目を凝らすと人影のようなものが見える。
「また影……? でも、前のとは違う感じがする。」
琴乃が慎重に台座の周りを観察する。
その瞬間、霧の中から低い声が響いた。
「秘宝を手にする者は、覚悟を示せ。」
霧がさらに濃くなり、台座を囲むように無数の影が現れた。それらはゆっくりと形を成し、人型の幻影へと変わっていく。人影の顔には表情がなく、無機質な目だけが光っていた。
「また来たか……! 今度はどうするんだ?」
幹太が構えながら琴乃に尋ねる。
「暴力じゃなくて平和を選ぶにしても、話が通じるかどうか……。」
琴乃が言いかけたその時、人影の一つが突然動き出した。