「最初に聞こえたのは、どこか遠くでぽつぽつと響く音だった。
それはただの雨音かと思えたが、次第に変わり始める。
ぽつ、ぽつ、どぅるん…落ちた音が何かを溶かし、広げていく感覚。次に足元からぎじゅっ、と濡れた音が鳴った。
何も踏んでいないはずだ。それでも、ぐぶり、と灰が生き物のように動き、吸い付く感触が足の裏に伝わる。
遠くではきぃん、と金属が悲鳴のような音を立て、ずるっ、と何かが落ちた。
音はどんどん近づいてくる。ぐつ、ぐぶ、くしゃ。灰が、死んだ何かが、這いずり寄ってくる音だった。それが『足音』だと気づいたのは、すぐ後だった。にえのあしおとは、こちらを追ってくるだけではない。
耳元に、ふすう、と囁くような息を感じたのだ。それはただの音ではなかった。灰そのものが息をし、音を鳴らしていた。」
それはただの雨音かと思えたが、次第に変わり始める。
ぽつ、ぽつ、どぅるん…落ちた音が何かを溶かし、広げていく感覚。次に足元からぎじゅっ、と濡れた音が鳴った。
何も踏んでいないはずだ。それでも、ぐぶり、と灰が生き物のように動き、吸い付く感触が足の裏に伝わる。
遠くではきぃん、と金属が悲鳴のような音を立て、ずるっ、と何かが落ちた。
音はどんどん近づいてくる。ぐつ、ぐぶ、くしゃ。灰が、死んだ何かが、這いずり寄ってくる音だった。それが『足音』だと気づいたのは、すぐ後だった。にえのあしおとは、こちらを追ってくるだけではない。
耳元に、ふすう、と囁くような息を感じたのだ。それはただの音ではなかった。灰そのものが息をし、音を鳴らしていた。」