テレビのスタジオは、静かな緊張感に包まれていた。カメラの前に座る白石湊斗の姿は、どこか冷静で、沈着だ。

その目は、過去を見据えるように、そして未来を見越しているようにも見えた。彼の周囲に漂う重い空気を、誰もが感じ取っている。

キャスターが質問を投げかける。

「白石さん、あなたの作品は、まるで九条朔夜のものを思わせるものがあります。彫刻に込められた感情やテーマも、彼の作品と重なりますが、これについてはどうお考えですか？」

白石は、ほんの少し微笑んで、言葉を紡ぎ始めた。

「九条さんの作品には、多くの人々を震撼させる力がありました。」

彼は少し言葉を選びながら続けた。

「私が作りたかったのは、彼のような事態を繰り返さないための彫刻です。

九条さんが引き起こした苦悩や混乱を、無意味に繰り返すのではなく、それを乗り越えるための新しい形を求めました。」

キャスターは少し驚いた様子で、彼の反応を観察する。

「それは、呪いの継承を断ち切るということですか？」

白石は再び優しく微笑んだ。

「真実とは、常に多面的なものです。」

その言葉に、スタジオ全体が一瞬沈黙した。彼の視線は、画面越しにカメラの向こうの視聴者を見つめているようだった。

「私は、彼を超えるんです。彼の呪いではなく、彼が残したものを超えていく。それが私の彫刻家としての使命です。」

その一言に、スタジオ内には不思議な静寂が広がった。どこか温かみを感じさせる優しさが、白石の言葉には込められていたが、その裏には確固たる決意が感じられた。

キャスターはしばらく黙っていた後、再び口を開く。

「なるほど…。今後、あなたが作り出す彫刻が、どのように世間に受け入れられるのか、それは大いに注目されることでしょう。」

白石は軽く頷き、再びその微笑みを浮かべた。

「私の作品がどれだけ評価されるかは、時が決めることです。ただし、私は一つだけ確信しています。私が作るものは、過去の痛みを癒すためのものです。」

インタビューが終わると、白石は席を立ち、静かにスタジオを後にした。彼の背中に、過去の呪いを断ち切るための強い意志が見えた。

今や彫刻家として生まれ変わった彼が、新たな時代を切り開くその姿は、どこか未来に向かって歩み始めたように見えた。

そして、彼が作り出す彫刻が、どんな形を取るのか、誰も予想できない。

ただ一つ確かなのは、白石湊斗が過去の亡霊を乗り越え、未来を自らの手で形作っていこうとしているということだ。