警察によって九条の逮捕が進む中、ついに彼の展示会での体調不良の真実が明かされることとなった。

警察は、九条のアトリエで押収した資料をもとに、彼が過去に製作した彫刻とその過程について徹底的な調査を行っていた。

調査の結果、九条が使用した遺灰の中に、予想もしなかった有害物質が含まれていたことが判明した。

被災後の混乱の中で、遺体は適切に処理されることなく一時的に埋葬され、遺灰はそのまま使用された。

だが、遺体の埋葬過程で、瓦礫や建材の破片、そして化学物質が混ざり込んでいたのだ。その結果、遺灰には有害物質、特に重金属や有毒ガスが含まれていた。

有害物質が体内に蓄積し、体に深刻な影響を与えていたのだ。特に、呼吸器系や免疫系に悪影響を及ぼし、身体的な症状を引き起こしていた。

「彼は自分の作品に命を懸けていたのかもしれませんが、その命が無視できない代償を伴っていたということです。」

警察の一人が説明した。遺灰を使った彫刻がどれだけ芸術的な価値を持っていたとしても、その裏には非常に危険な影響が潜んでいたという事実が、警察の調査によって明らかになったのだった。

「もし、彼があの遺灰を使わなければ、こんなことにはならなかったのだろうか…」

白石は、展示会の頃に彼が見せた姿を思い出しながら、心の中で問いかけた。

警察はさらに調査を進め、九条が作品に使った遺灰の出所を突き止めることに成功する。

そこで新たに明らかになったのは、九条が地元で直接手に入れた遺灰の大部分が、被災地で遺体が適切に処理されていなかった地域から来ていたという事実だった。

九条はその後、作品に関して一切の弁明をせず、ただ静かに逮捕される。だが、その裏には多くの悲しみと罪の意識、そして人間的な弱さがあったことが少しずつ浮き彫りになってきた。