録音日時：2025年2月20日

場所：被災者の自宅


女性（40代・災害被害者・匿名希望）

少し緊張した様子だったが、話し始めると抑えられない感情が溢れ出すようだった。



女性：「最初は、ただの偶然だと思ったんです。九条さんの展示会に行った後に感想をXに投稿したら、知らない人からDMが来たんです。

『あなたもこどもをさくひんにするといい』……ねえ、不気味ですよね？誰がそんなこと言うのかって思いました。でも、何だか怖くて、その時は無視したんです。」

彼女は苦笑いを浮かべたが、その目にはどこか曇りがあった。



女性：「でも、数日後にまたメッセージが届いて……今度は違いました。

『私も災害の被害者なんです』って始まって、『あなたの気持ちが痛いほど分かる』とか。

正直、最初のDMの印象が悪すぎて、警戒してたんですけど……急に人間らしい言葉になったんで、つい返事しちゃったんです。」

彼女の手は震えていた。それが恐怖によるものか、後悔によるものかは分からなかった。



女性：「あ、言い忘れてましたけど、私も災害を経験しているんです。

……息子を、亡くしました。4歳くらいで、まだ小さくて。本当に、ただそこにいただけなのに……。」

ここで彼女は一瞬黙り込む。目には涙が浮かんでいるが、すぐに話を続けた。



女性：「その人は、私に同情してくれてるって思ったんです。

『あなたは強い』『あなたの息子さんも誇りに思う』とか言われて……誰かにそう言われたかったのかもしれませんね。

でも、そのうち話が九条さんに向かっていったんです。」

彼女は視線を伏せながら、小さな声で話を続けた。



女性：「その人が言うには、九条さんは遺灰で彫刻を作っているんですって。最初は信じられませんでしたよ。

でも、聞けば聞くほど、何か魅力的に感じたんです。最近、遺灰をペンダントに入れるとか、そういうのが流行ってるじゃないですか。

それと同じようなものだと思えば……いいかなって。私、息子のこと、何か形にして残したかったんです。」

彼女の声には、微かに興奮と罪悪感が混ざっていた。



女性：「それで、九条さんのマネージャーさんに連絡を取ったんです。

でも、返ってきたのはすごく切羽詰まった声で、『誰にもこのことを言うな』ですよ？まるで私が悪いことをしてるみたいに。

でも、別におかしいことじゃないですよね？今ではありふれてることだし……。」

彼女はそう言いながらも、どこか疑念が拭いきれない表情だった。



女性：「それにしても、あの最初のDMを送ってきた人……結局、誰だったんでしょう？九条さんとも関係があったのか、それともただの偶然だったのか……。」

彼女はここで言葉を切った。声には安堵のようなものが混ざっていたが、その目には不安の影が色濃く残っていた。