インタビュー記録:■■町住民・佐野啓介(仮名)、48歳
記録日:1949年5月14日
記録者:不詳
「最初は普通の人だったんですよ、あの人は。ただの気のいい職人でした。
災害の前は、本当にごく普通のアクセサリーを作ってて、地元の人たちからも信頼されてたんです。」
そう語るのは、当時アクセサリー職人と親しかったとされる町の住人・佐野啓介さん(仮名)だ。災害前、彼は職人の作品を地元で売り込む手伝いをしていたという。
「彼女(職人)はとにかく真面目で、繊細な細工をする人でした。
指輪やブレスレットに込めるデザインには、地元の花とか、思い出の風景とか、温かみのあるものが多かったんです。
それが、災害を境に……まるで人が変わったようでした。」
佐野さんは、津波災害後に職人が徐々に変わっていった様子を語った。
「災害の後、彼女はどこかおかしくなってしまったようでした。
親しい人を亡くしたから、まあ、それは当然なんですけど……それだけじゃなかったんです。
突然、“灰”のことばかり話すようになったんですよ。“灰が何かを囁く”“灰が形を求めてる”なんて、意味不明なことを。」
彼女の変化は、作品にも現れたという。
「ある日、彼女の店に新しいアクセサリーを見に行ったんです。でも、その時見せられたのは、これまでの彼女の作風とはまったく違うものでした。
リングやネックレスの中に、なんだか灰のようなものが埋め込まれてたんです。最初はただの石か何かかと思いました。でも、彼女が言うんです。“これは遺灰なの”って。」
佐野さんは最初、それが冗談だと思ったという。しかし、彼女の真剣な様子に背筋が凍ったという。
「“亡くなった人たちは形を求めてる”とか、“私がその形を作る使命を与えられた”とか言い始めたんです。
最初は、災害のショックで何かおかしくなってしまったのかと思いました。でも、その後、町の人たちが彼女に遺灰を託し始めたんです。
最初はお守りみたいなものを作ってほしいという頼みだったみたいですが、次第にその範囲が広がっていきました。」
町の人々がなぜそれを受け入れたのかについて、佐野さんは苦しげに語る。
「おかしいと思いながらも、どこかで彼女の言葉に引き寄せられてたんです。“灰は語る”っていう言葉に。
自分も、亡くした家族のことを思い出して、彼女にお願いしようかと何度も思いました。でも、その頃には彼女自身が別人のようでした。
目が……赤くなってたんです。ずっと何かを見透かすような目つきで、話してると不安になるほどでした。」
佐野さんは職人の変貌を「恐ろしい」と表現するが、それと同時に、どこか彼女に引き寄せられるような感覚もあったと打ち明けた。
アクセサリー職人はその後、響霧町に引っ越したため詳しい住所はわからないとのこと。
記録日:1949年5月14日
記録者:不詳
「最初は普通の人だったんですよ、あの人は。ただの気のいい職人でした。
災害の前は、本当にごく普通のアクセサリーを作ってて、地元の人たちからも信頼されてたんです。」
そう語るのは、当時アクセサリー職人と親しかったとされる町の住人・佐野啓介さん(仮名)だ。災害前、彼は職人の作品を地元で売り込む手伝いをしていたという。
「彼女(職人)はとにかく真面目で、繊細な細工をする人でした。
指輪やブレスレットに込めるデザインには、地元の花とか、思い出の風景とか、温かみのあるものが多かったんです。
それが、災害を境に……まるで人が変わったようでした。」
佐野さんは、津波災害後に職人が徐々に変わっていった様子を語った。
「災害の後、彼女はどこかおかしくなってしまったようでした。
親しい人を亡くしたから、まあ、それは当然なんですけど……それだけじゃなかったんです。
突然、“灰”のことばかり話すようになったんですよ。“灰が何かを囁く”“灰が形を求めてる”なんて、意味不明なことを。」
彼女の変化は、作品にも現れたという。
「ある日、彼女の店に新しいアクセサリーを見に行ったんです。でも、その時見せられたのは、これまでの彼女の作風とはまったく違うものでした。
リングやネックレスの中に、なんだか灰のようなものが埋め込まれてたんです。最初はただの石か何かかと思いました。でも、彼女が言うんです。“これは遺灰なの”って。」
佐野さんは最初、それが冗談だと思ったという。しかし、彼女の真剣な様子に背筋が凍ったという。
「“亡くなった人たちは形を求めてる”とか、“私がその形を作る使命を与えられた”とか言い始めたんです。
最初は、災害のショックで何かおかしくなってしまったのかと思いました。でも、その後、町の人たちが彼女に遺灰を託し始めたんです。
最初はお守りみたいなものを作ってほしいという頼みだったみたいですが、次第にその範囲が広がっていきました。」
町の人々がなぜそれを受け入れたのかについて、佐野さんは苦しげに語る。
「おかしいと思いながらも、どこかで彼女の言葉に引き寄せられてたんです。“灰は語る”っていう言葉に。
自分も、亡くした家族のことを思い出して、彼女にお願いしようかと何度も思いました。でも、その頃には彼女自身が別人のようでした。
目が……赤くなってたんです。ずっと何かを見透かすような目つきで、話してると不安になるほどでした。」
佐野さんは職人の変貌を「恐ろしい」と表現するが、それと同時に、どこか彼女に引き寄せられるような感覚もあったと打ち明けた。
アクセサリー職人はその後、響霧町に引っ越したため詳しい住所はわからないとのこと。