九条は、展示会を開催することを決意した。家族の合意を得たその展示会には、彼が作り上げた数々の彫刻が並ぶことになった。

だが、それは単なる芸術作品の展示ではなかった。そこに並ぶ彫刻はすべて、彼が使った遺灰—愛する者を失った人々の記憶、そして自分自身の贖罪の証だった。

展示会の前日、九条はその準備に追われていた。アトリエに並べられた彫刻たちは、どれも魂が込められたかのように、ただ静かに、しかしどこか不安げに立っている。

それらは一見美しく、緻密に彫られていたが、見る者の心に重い影を落とすことがわかっていた。

彼の作品に込められた意図は、もはや美術の枠を超え、過去の痛みと贖いの象徴となっていた。

「これが、僕の贖罪なんだ。」

九条は一人、アトリエの中で呟いた。目の前に立つ彫刻の一つ、悠生の遺灰を使って作られた像を見つめながら、その言葉を繰り返した。

悠生の顔が彫刻の中に浮かび上がる。かつて共に過ごした日々、あの無邪気だった頃の自分、そしてあの時、遺体を燃やしてしまった後悔と罪の念。それらがすべて、この彫刻に込められていると感じていた。

展示会が開かれる日、会場には多くの人々が集まった。地元の人々や、九条の彫刻に興味を持つ観客たちが、次々と会場に足を踏み入れる。

最初はその美しさに引き寄せられた者たちも、次第にその背後にある深い意味に気づき始める。彫刻の前で立ち尽くし、しばらく言葉を失う者もいた。

「これ、篠宮さんの…?」

ある来場者が呟く声が聞こえた。その問いには、深い意味が込められている。その顔を見ると、佐藤杜子(さとうとこ)、隣には小さな女の子…佐藤澪の母であった。

未来で九条のマネージャーとなる佐藤との再会である。

その中でも、最も注目を集めたのは、「亡き友」と名付けられた彫刻だった。

悠生の遺灰を使ったその作品は、彼の親友であり、かけがえのない存在だった悠生を象徴するものだった。

しかし、それは単なる記憶の具現化にとどまらず、九条自身の罪の告白でもあった。

観客たちはその前で涙を流す者もいれば、深く沈思黙考している者もいた。九条は、そんな中で静かに展示会を見守っていた。

彼は、誰一人として言葉をかけてくれなくても構わなかった。なぜなら、これが彼の全てであり、彼自身の苦しみと贖罪を表現する唯一の方法だったからだ。

展示会の最後、九条は一人、会場の隅で立ち尽くしていた。人々の姿が次第に少なくなり、最後の来場者が帰ると、ようやく彼は目を閉じて深呼吸をした。

その時、彼の心には、一種の安堵と共に、何とも言えない虚無感が広がっていた。

「いつまで、俺は……」