九条は彫刻を作り続けた。無言で、ひたすらに彫刻刀を手に取り、ただひたすらに削り続ける。その手が動くたびに、過去の記憶がフラッシュバックする。

悠生の遺灰を使ったこと、彼の家族への謝罪、そしてそれがきっかけで生まれた無言の誓い—すべてが彼の中で繰り返し反響していた。

だが、その彫刻はもはや彼自身の内面を反映するものではなくなっていた。周囲の人々が次々と九条に依頼してきたからだ。

地元の家族が、愛する人を失った悲しみを彫刻で表現してほしいと頼んでくる。

その中には、九条が作った彫刻に触発されて、自分たちも同じように遺灰を使って作品を作ってほしいという願いもあった。

どこから聞きつけたのか、いやおそらく篠宮さんが……でも、篠宮さんたちを責める権利などなかった。それで、許されるのであれば……

「九条さん、うちの娘が…」

「九条さん、我が家の父親を…」

そんな依頼が次々と舞い込むたびに、九条は自分の責任をひしひしと感じていた。

彼が作った作品が地元の人々にとって重要な意味を持つようになったのは、当然のことのように思えたが、同時にそれが自分の負の連鎖を生んでいることを痛感せずにはいられなかった。

「彼らのために作るべきなのか、それとも…」

九条は夜中に一人、黙々と彫刻を削る中で、何度もその問いを自分に投げかけた。しかし、答えは見つからない。

自分の罪とその償いのために彫刻を作り続けるべきなのか、それともすべてをやめて逃げるべきなのか。

だが、逃げることができなかった。

「すべて、自分の責任だ。」

それは九条にとって、もはや避けられない現実であり、彼の宿命だった。自分が起こした過ち、そしてその過ちを償おうとする一連の行動—それが、彫刻という形になって表れ続けるのだ。

彼はもう、止まることができなかった。