日時:2025年2月15日 夜間の電話取材

場所:自宅にて

本日、バス停で九条朔夜展についての取材をした来場者から突然不明瞭な電話がかかってきた。以下はその録音記録である。



証言者(震えた声):「誰かいる…いるんだ、家の中に。ずっと見てる。ずっと……見てるんだ。」

証言は途切れ途切れだが、息を荒げる音がひどく不安を掻き立てる。電話越しに聞こえる雑音の中に何か奇妙な音が混じる。

耳を澄ますと、それは水滴が床に落ちる音に似ていた。

インタビュアー:「落ち着いてください。家にはあなた以外に誰かいるんですか?」

証言者:「いない、いない!いや、いる!立ってるんだ、廊下の端に……赤い何かを着てる。ジャージかな?わからない。でも目が、目が…じっとこっちを見てる!あの目は、あの目は……」

彼はここで息を詰まらせ、電話越しにすすり泣きのような音が聞こえた。

インタビュアー:「落ち着いて。誰かを呼びますか?警察に連絡を——」

証言者(遮るように):「違う!警察なんかじゃどうにもならない!あいつは…“ここにいる”だけなんだ。ずっと。“赤い、赤い、赤い”……。」

突然、彼は奇妙な言葉を繰り返し始めた。その声には、ただの恐怖を超えた何かが含まれていた。

証言者:「赤い!赤い!赤いんだ!壁が、床が、全部赤くなる!血じゃない、血じゃない、これは何だ……いや、あれは“赤い花”だ。

そうだ、赤い花が咲いている……誰が植えたんだ……おかしい……狂ってる、狂ってるんだ!」

彼の声は次第に高くなり、叫び声に近い響きに変わった。

その間、電話の向こうから奇妙な音が断続的に響いていた。水滴の音、水中で誰かがもがくような音、そしてその中に混じる、低く押し殺したような笑い声。

証言者:「もういないはずだ!いないはずなのに!どうして…どうしてここにいるんだ!“赤いお花はお友達の証”だって……そんなこと……僕は知らない!知らない!」

突然、電話は途切れた。再び連絡を取ろうとしたが、証言者は応答せず、翌日、彼の家に連絡したところ、精神的に不安定な状態で病院に搬送されたとのことだった。


後日談:
証言者の家の調査結果によれば、異常な痕跡は発見されなかった。

ただし、リビングルームのテーブルの上に赤い花びらが一枚だけ落ちていたという。それがどこから来たものなのか、彼の家族は誰も答えることができなかった。

また、証言者の叫び声の中にあった「赤いお花はお友達の証」という言葉は、九条朔夜展の来場者が共通して発する不可解なフレーズとして、複数の証言に登場している。