記事の話題性は地方を超え、ついに県外のテレビニュースにも取り上げられるようになった。

ニュース番組では、九条の展示会の映像とともに、美術評論家やアート愛好家が彼の作品について熱く語る。

「彼の彫刻は単なるアートではなく、生命そのものを象徴しています。それが観る人々に感動と同時に深い思索を促しているのです。」



一方、九条本人もこの急激な注目を静かに受け止めていた。美術館の控室で雑誌を手に取りながら、記事を読み終えた彼は、どこか遠い目をしていた。

白石の記事は、彼の内面を鋭く切り取りながらも、決して踏み込みすぎず、彼の哲学を尊重する内容に仕上がっていた。

「白石湊斗……なかなか面白い男だ。」

九条は静かに呟き、雑誌をテーブルに置いた。その顔には、かすかな笑みが浮かんでいた。

彼の胸の中で、新たな決意が芽生えつつあった――もっと多くの人々に自分の作品を見せ、感じさせる必要があると。


白石自身も、公開された記事の反響に驚きを隠せなかった。

ネットや雑誌の読者から寄せられるコメントや感想は、彼の記事が確かに多くの人の心を動かした証拠だった。

「僕が書いた記事でこんなに人が動くなんて……。」

白石は胸の奥に小さな誇りと同時に、責任感を抱いていた。彼の記事が九条をさらに有名にし、多くの人を展示会に導いた。

しかしその一方で、展示会に訪れた人々の中には、体調不良を訴える者も少なくないという事実を彼は忘れてはいなかった。

「次は……もっと深く掘り下げないと。」

彼はペンを握り直し、九条朔夜という謎の芸術家に迫る新たな記事の構想を練り始めていた。