津波災害後の友人の変貌に関するインタビュー


インタビュー記録:■■町在住・村井茜(仮名)、32歳
記録日:2011年11月2日
記録者:不詳



「津波が来る前の彼女は、普通の人でした。

明るくて、おしゃべりで、誰にでも優しかった。災害で何もかも失った私を、真っ先に支えてくれたのも彼女でした。でも…あの波の後、彼女は少しずつ変わっていったんです。

最初は小さなことでした。何かを考え込む時間が増えたようで、よく遠くを見つめていました。

目がどこか冷たいっていうか、まるで人じゃないみたいな、何か別のものを見ているような感じで。

それが気になって『どうしたの?』って聞いても、彼女は笑って『なんでもない』としか言わない。だけど、あの笑顔には昔の温かさがもう無かったんです。

それからです。突然、私に罪を告げるようになったのは。

最初に言われたのは、災害の夜に泣いているだけで何もしなかったことを責められました。『どうして助けなかったの?』って。助けられるわけがなかった。

瓦礫に閉じ込められて、声をあげるのが精一杯だったのに。でも彼女は、そんな事情なんて聞こうともせず、まるで裁判官のような目で私を見てきたんです。

その目…思い出すだけで震えます。赤黒く濁っていて、瞳孔が異常に開いているみたいに見えた。

光を吸い込むような、そんな目。何度も言葉で刺されるようでした。『あなたが逃げたから、あの子は死んだ』『本当は助けられたのに、見捨てたんでしょ?』って。あんなこと言う人じゃなかったのに。

それから接触するたびに、私はどんどんおかしくなっていきました。自分が本当に悪いことをしたような気がして、夜も眠れなくなった。

彼女と会うたびにその目で見られて、私の罪を背負わせようとする。その目が夢にまで出てくるんです。だけど、彼女はどんどん元気になる。私の中の罪を吸い取るみたいに。

町の他の人も、彼女に似たようなことを言われて、次第に彼女を避けるようになりました。

最終的に彼女は家族にも見放されて、町の外れに引っ越しました。

でも、彼女のことを考えると、今でも息が苦しくなる。『罪は誰にもあるんだ』って、耳元で囁かれる気がするんです。

それでも、彼女が悪いとは思えないんです。

あんな目をしていた彼女を思い出すと…まるで何かに取り憑かれていたみたいで、彼女自身も苦しんでいたんじゃないかって。

そう思うんです。だけど、もう彼女に会う勇気はありません。私はただ…あの目を忘れたい。それだけなんです。」



備考:村井茜さんはこのインタビュー後、自宅で奇怪な音を聞き続けるようになり、数週間後に失踪。彼女の失踪とともに、インタビュー中に語られた友人の現在の所在は不明。