彩菜は「裏切り者」と記されたカードを手にしながら、部屋を見回した。他の参加者たちもそれぞれのカードを確認し、動揺した表情を浮かべている。
俊煕が先に口を開いた。
「このカードの内容を全員で公開する必要があるんだろう。時間を無駄にしないためにも、一人ずつ話していこう。」
彼の冷静な提案に、誰も反論しなかった。最初に発言したのは香子だった。
「私のカードには、『嘘をついてはいけない』って書いてあるわ。これってどういう意味かしら？」
香子の視線が他の参加者に向けられる。次々とカードの内容が共有されていく中で、颯介がカードをテーブルに置いた。
「俺のカードには『誰かを守れ』と書いてある。これって、誰かを信じろって意味か？」
全員がカードの内容を共有した後、彩菜は一歩踏み出し、自分のカードをテーブルに置いた。
「…私のカードには、『裏切り者』と書いてありました。」
部屋が静まり返る。他の参加者たちの視線が一斉に彩菜に向けられる。
「それってどういうことだ？本当にお前が裏切り者なのか？」俊煕が鋭い声で問いかける。
「分からない。ただ、私は嘘をついていない。」彩菜の声は震えていたが、その目は揺るぎなかった。
俊煕はしばらく彩菜を見つめた後、部屋全体に向かって言った。
「誰かがこの試練で嘘をついている。カードの内容が真実とは限らない。だが、ここで互いを疑って潰し合うのは愚かだ。」
その言葉に、部屋の緊張感が少しだけ和らいだ。しかし、この試練を通じて何を信じ、何を疑うべきなのか、全員が迷い始めていた。