第三楽章 第二小節 ギターとSHINOBIとロックンロール 後編
-「ドラマーとは、リズムを創り出すことに人生を賭けた奴だ。」-
【AndyーNewmark(1967〜)】アメリカ合衆国の最高のドラマーだった。
『はァ? バンド??』
『そ。 バンド!!』
ニッコリと微笑みながら、興戸先輩はえげつない言葉を告げた。
『本番、来月なんすよ。』
『ら、来月ゥ!?』
共鳴君が、見るからにサッと顔面蒼白となっていく。
『えーっと、3人は、なんかロック系の楽器とかやってた?』
共鳴『い、一応ロックギターはちょびっと齧った程度には……。
(ギターが出来たらモテると思って)』
『ハイハイ決まりね! センター宜しく。』
『いやいや流石に厳しいって!』
『だーい丈夫‼️ 自分が一から教えてあげるからさ!』
そう言って 先輩は、さり気なく共鳴君の両手をとり、上目遣いで艶やかに笑みを浮かべる。
『……。 おねがい?』
『ッッ分かりやしたぁぁ‼️ オネシャス!!!』
……。チョロい。 いくら何でも呆れる位にチョロ過ぎる。
それの返事を聞くと、先輩は一気に表情が明るくなった。
そして今度は僕の右の席、音無さんに交渉しだした。
『えーっと。 そこの女子は、何か出来る?』
音無『……。
楽器なら、一通り習って来たし、』
『ベース!!! ベースギターいける?』
音無『出来るけど、
……。 バンドとか、別に興味無いし。』
『……。』
『ここだけの話……。
報酬金、……。結構積みますよ?』
音無『とても興味が湧きました。
興戸先輩、 今すぐ教えてください。』
ッおい‼️ 音無さん‼️
心做しか、彼女の目が$$になっている様に見える。
とうとう先輩と僕の目が合った。
『さて、と。
白黒くん、 何か出来る楽器とかは……』
『ピアノしか……。』
『キーボードで行こうか。
基本はピアノと一緒だから大丈夫大丈夫!!!』
『ちょっと、待って下さい!!! 』
『ん〜、何?』
『、僕達、まだ入学したばかりだし、
…………。 何で、そんなに焦ってるんですか?』
興戸先輩は、若干驚いたように両目を見開き、瞬きをした。
その困った様に微笑む表情には、一抹の翳りが浮かぶ。
『……。焦ってる、かぁ……。
そうかもね。
自分、家出してきたんすよ。』
『え?』
『家族との……。実家との折り合いが悪くてね。
そんでぇ、衣食住に困って、全寮制の学校がここしか無かったんすよ。
それで、受験してみたら受かった、って訳。』
音無『はァ? そんな簡単に受かる訳が……』
『ハハハ、これでも自分、おつむはいい方なんでw』
共鳴『…。 オレの、苦労は……。』
『でも、やっぱ聖帝学園の同級生たちは、空気が、熱意が違った……。
【音楽】を知らない様な、自分みたいな半端者が来ていいとこじゃあ無かった……。』
『……。』
『宛も無く途方に暮れ、明日への希望すら見失った。
そんな自分に、声を掛けてくれる人が現れたんっすよ。』
そう言って、興戸先輩はゆっくり笑った。
それは、幼い日の想い出を懐かしむ時の様な、優しげな笑顔だった。
『千秋、
六弦 千秋が、やる気も才能もない、こんな自分をバンドに誘ってくれたんすよ。』
……!!! あの、もう1人の留年生、そんな過去が。
『それからの毎日はもう、幸せそのものだったんすよ。
バンド仲間が、生まれて初めての友達が出来て、
放課後は毎日アイツらとバカやらかして、怒られる時さえ楽しくて仕方がなかった。』
……。
『魂が痺れて身体中の血が躍るような、あの高揚感。
初めてステージで演奏した時は
そりゃあもう……。一生の想い出っすね。』
なら、どうして……。
『それはライブの直後だった。
「もう演奏は出来ない。」
千秋が突然言い出して。
正直、ビビりましたよ。 アイツは、バンドリーダーで、ロックが此の世で何よりも好きなのに 』
『どうして、ですか?』
興戸先輩は俯いたまま、首を振る。『……。 それは、分からない。』
『アイツが居なくなってから 皆、実家の手伝いに戻る、とか 勉強が忙しいとかで、集まれなくなって
バンドは少しづつ、確実にバラバラになっていった…………。』
そこまで言うと、興戸先輩は 面を上げ、真正面から僕らを見据えた。
『それでも、自分は信じたいんです。離れ離れになっても、心の奥では皆ロックを、バンドを【愛してる】
って事を。 たとえ、
…………。
例え、自分の思い違いでも良い。 今回ハッキリさせたいんです。自分の……。迷いにも』
『先輩……。』
『来月……。 来月の、ライブの日は 自分らのバンドの、結成記念日なんです。
アイツらも、千秋も……。 きっと覚えてて、見に来てくれるはず。
その時に、ゆっくりと話し合いたいんすよ。
…………。自分らの、これからについて。』
そんなこと、知ってしまったら、僕はもう…………!!
『……。 分かりました。 僕にもバンド、お手伝いさせて下さい。』
興戸 『マッ! マジっすか⁉️ 良いんすか?
本当に…………。マジアザっッす‼️ 』
心無しか、笑っている先輩の目が、潤んでいる様にも見える。
共鳴 『うっし、話も決まった事だし……。
ラムセンパイ、バンド名って、何なんですかね??』
興戸 『あぁ、そーいや言って無かったッスね。
バンド名は、
【十三世紀末dark∞ 《インフィニティ》】ッスよ。』
音無『』
共鳴『……あ、はい。……』
僕『』
3人とも、考えていることは同じだろうという確信が、ある。
だが……。 控えて置こう。
そうして、僕らのバンド練習が幕を開ける。
-「ドラマーとは、リズムを創り出すことに人生を賭けた奴だ。」-
【AndyーNewmark(1967〜)】アメリカ合衆国の最高のドラマーだった。
『はァ? バンド??』
『そ。 バンド!!』
ニッコリと微笑みながら、興戸先輩はえげつない言葉を告げた。
『本番、来月なんすよ。』
『ら、来月ゥ!?』
共鳴君が、見るからにサッと顔面蒼白となっていく。
『えーっと、3人は、なんかロック系の楽器とかやってた?』
共鳴『い、一応ロックギターはちょびっと齧った程度には……。
(ギターが出来たらモテると思って)』
『ハイハイ決まりね! センター宜しく。』
『いやいや流石に厳しいって!』
『だーい丈夫‼️ 自分が一から教えてあげるからさ!』
そう言って 先輩は、さり気なく共鳴君の両手をとり、上目遣いで艶やかに笑みを浮かべる。
『……。 おねがい?』
『ッッ分かりやしたぁぁ‼️ オネシャス!!!』
……。チョロい。 いくら何でも呆れる位にチョロ過ぎる。
それの返事を聞くと、先輩は一気に表情が明るくなった。
そして今度は僕の右の席、音無さんに交渉しだした。
『えーっと。 そこの女子は、何か出来る?』
音無『……。
楽器なら、一通り習って来たし、』
『ベース!!! ベースギターいける?』
音無『出来るけど、
……。 バンドとか、別に興味無いし。』
『……。』
『ここだけの話……。
報酬金、……。結構積みますよ?』
音無『とても興味が湧きました。
興戸先輩、 今すぐ教えてください。』
ッおい‼️ 音無さん‼️
心做しか、彼女の目が$$になっている様に見える。
とうとう先輩と僕の目が合った。
『さて、と。
白黒くん、 何か出来る楽器とかは……』
『ピアノしか……。』
『キーボードで行こうか。
基本はピアノと一緒だから大丈夫大丈夫!!!』
『ちょっと、待って下さい!!! 』
『ん〜、何?』
『、僕達、まだ入学したばかりだし、
…………。 何で、そんなに焦ってるんですか?』
興戸先輩は、若干驚いたように両目を見開き、瞬きをした。
その困った様に微笑む表情には、一抹の翳りが浮かぶ。
『……。焦ってる、かぁ……。
そうかもね。
自分、家出してきたんすよ。』
『え?』
『家族との……。実家との折り合いが悪くてね。
そんでぇ、衣食住に困って、全寮制の学校がここしか無かったんすよ。
それで、受験してみたら受かった、って訳。』
音無『はァ? そんな簡単に受かる訳が……』
『ハハハ、これでも自分、おつむはいい方なんでw』
共鳴『…。 オレの、苦労は……。』
『でも、やっぱ聖帝学園の同級生たちは、空気が、熱意が違った……。
【音楽】を知らない様な、自分みたいな半端者が来ていいとこじゃあ無かった……。』
『……。』
『宛も無く途方に暮れ、明日への希望すら見失った。
そんな自分に、声を掛けてくれる人が現れたんっすよ。』
そう言って、興戸先輩はゆっくり笑った。
それは、幼い日の想い出を懐かしむ時の様な、優しげな笑顔だった。
『千秋、
六弦 千秋が、やる気も才能もない、こんな自分をバンドに誘ってくれたんすよ。』
……!!! あの、もう1人の留年生、そんな過去が。
『それからの毎日はもう、幸せそのものだったんすよ。
バンド仲間が、生まれて初めての友達が出来て、
放課後は毎日アイツらとバカやらかして、怒られる時さえ楽しくて仕方がなかった。』
……。
『魂が痺れて身体中の血が躍るような、あの高揚感。
初めてステージで演奏した時は
そりゃあもう……。一生の想い出っすね。』
なら、どうして……。
『それはライブの直後だった。
「もう演奏は出来ない。」
千秋が突然言い出して。
正直、ビビりましたよ。 アイツは、バンドリーダーで、ロックが此の世で何よりも好きなのに 』
『どうして、ですか?』
興戸先輩は俯いたまま、首を振る。『……。 それは、分からない。』
『アイツが居なくなってから 皆、実家の手伝いに戻る、とか 勉強が忙しいとかで、集まれなくなって
バンドは少しづつ、確実にバラバラになっていった…………。』
そこまで言うと、興戸先輩は 面を上げ、真正面から僕らを見据えた。
『それでも、自分は信じたいんです。離れ離れになっても、心の奥では皆ロックを、バンドを【愛してる】
って事を。 たとえ、
…………。
例え、自分の思い違いでも良い。 今回ハッキリさせたいんです。自分の……。迷いにも』
『先輩……。』
『来月……。 来月の、ライブの日は 自分らのバンドの、結成記念日なんです。
アイツらも、千秋も……。 きっと覚えてて、見に来てくれるはず。
その時に、ゆっくりと話し合いたいんすよ。
…………。自分らの、これからについて。』
そんなこと、知ってしまったら、僕はもう…………!!
『……。 分かりました。 僕にもバンド、お手伝いさせて下さい。』
興戸 『マッ! マジっすか⁉️ 良いんすか?
本当に…………。マジアザっッす‼️ 』
心無しか、笑っている先輩の目が、潤んでいる様にも見える。
共鳴 『うっし、話も決まった事だし……。
ラムセンパイ、バンド名って、何なんですかね??』
興戸 『あぁ、そーいや言って無かったッスね。
バンド名は、
【十三世紀末dark∞ 《インフィニティ》】ッスよ。』
音無『』
共鳴『……あ、はい。……』
僕『』
3人とも、考えていることは同じだろうという確信が、ある。
だが……。 控えて置こう。
そうして、僕らのバンド練習が幕を開ける。