「知ってる? 遠い遠い国では、赤色は愛と情熱を司る色だと言われているのよ」
ガルムは頭をもたげ怪訝な顔をする。
ゲームの中で「赤い目」を肯定されヒロインに傾倒したガルムの姿は、一種の美談として描かれていた。
しかし現実的に考えると、他人の言葉1つに固執してしまうのはどう考えても不健全であり、ヒロインに依存するのも想像に難くない。
そして依存体質者は、得てしてヤンデレにクラスチェンジしがちだ。
ここで「依存」という名のヤンデレの芽を詰んでおかねば、後々ヤンデレ化の燃料になりかねない。それなら依存体質にさせないよう、ガルムの自己肯定感を上げるべきだ。
ピフラは言い訳をする子供のように饒舌に、立て板に水が如く語り始めた。
「ほっほら『心血を注ぐ』という言葉があるでしょう?」
「……それが何ですか」
「これは全身全霊、自分の全てを賭して物事にあたることを言うのだけどね? 文字通り注げる血と心がなければ、体も、魂だって動かない。
いいこと? ガルム。頂きへ昇れる者は皆、心が健全で熱血であるものなの。これは自然の摂理よ。つまり赤色は、世界の原動力と情熱の象徴なのよ。
あなたの赤色はね、そんな可能性を秘めている素晴らしい色なの」
「……はい?」
今のガルムにできることは少しでも自分に自信を持ってもらうこと。他人の言葉に執着せず、自分自身を生きられるサポートをしてあげること。
けれど、自己肯定感の低い人間に、「自分を好きになろう」「あなたはあなたのままで素晴らしい」などと言っても無駄だ。それが出来るなら、とっくに楽しく人生を謳歌しているのだから。
ガルムにはまず他己評価されることが重要だ。「もしかしたら自分は、自分が思っているより素晴らしいかもしれない」と少しずつ肯定感を積み上げていくのである。
だからガルムには、ガルムを正当に評価して大切にしてくれる人が必要だ。
「一説によると、赤色は神経に刺激を与えて、血圧を上げたり興奮させる作用があるんですって。だから赤は人々に熱情を与えて愛を育むよ。ううん、愛そのものだと、わたしは思うの」
「……愛?」
「そうよ! そんな色を持つあなたはきっと誰よりも愛情深いんでしょうね。あなたに愛される人はとても幸せ者だわ、羨ましい。わたしね、赤色が好きなの。本当に大好きよ」
赤色肯定のプレゼンは止まることを知らない。
ピフラの舌がこんなに回ったのは、壺を割って言い訳した時以来。実に6年ぶりである。
ガルムを手塩にかけんとピフラの瞳は真っ赤に充血しており、およそ淑女とは思えない人相である。
気がつけば、互いの膝が触れ合うほどガルムの近くまで迫っているほどで。
心理的にも物理的にもピフラに追い込まれたガルムは遂に降参した。
「わかっ……分かりましたから!」
「そう? じゃあ何が分かったのか言ってみて!」
表情がパッと明るくなったピフラは、鼻を「ふんっ」と鳴らした。
(渾身のプレゼンが効いた!? ほらね、赤色って最高だよね? 自己肯定感上がったよね? ていうか上がれ!!)
興奮冷めやらぬピフラ。すると、ガルムは赤々と茹だった顔で一杯一杯に答えた。
「……なんですよね」
「え、何? もう1回」
「だから……お、俺のことが好きなんですよね!!」
──うん?
ピフラの時がピタッと止まった。
ガルムは頭をもたげ怪訝な顔をする。
ゲームの中で「赤い目」を肯定されヒロインに傾倒したガルムの姿は、一種の美談として描かれていた。
しかし現実的に考えると、他人の言葉1つに固執してしまうのはどう考えても不健全であり、ヒロインに依存するのも想像に難くない。
そして依存体質者は、得てしてヤンデレにクラスチェンジしがちだ。
ここで「依存」という名のヤンデレの芽を詰んでおかねば、後々ヤンデレ化の燃料になりかねない。それなら依存体質にさせないよう、ガルムの自己肯定感を上げるべきだ。
ピフラは言い訳をする子供のように饒舌に、立て板に水が如く語り始めた。
「ほっほら『心血を注ぐ』という言葉があるでしょう?」
「……それが何ですか」
「これは全身全霊、自分の全てを賭して物事にあたることを言うのだけどね? 文字通り注げる血と心がなければ、体も、魂だって動かない。
いいこと? ガルム。頂きへ昇れる者は皆、心が健全で熱血であるものなの。これは自然の摂理よ。つまり赤色は、世界の原動力と情熱の象徴なのよ。
あなたの赤色はね、そんな可能性を秘めている素晴らしい色なの」
「……はい?」
今のガルムにできることは少しでも自分に自信を持ってもらうこと。他人の言葉に執着せず、自分自身を生きられるサポートをしてあげること。
けれど、自己肯定感の低い人間に、「自分を好きになろう」「あなたはあなたのままで素晴らしい」などと言っても無駄だ。それが出来るなら、とっくに楽しく人生を謳歌しているのだから。
ガルムにはまず他己評価されることが重要だ。「もしかしたら自分は、自分が思っているより素晴らしいかもしれない」と少しずつ肯定感を積み上げていくのである。
だからガルムには、ガルムを正当に評価して大切にしてくれる人が必要だ。
「一説によると、赤色は神経に刺激を与えて、血圧を上げたり興奮させる作用があるんですって。だから赤は人々に熱情を与えて愛を育むよ。ううん、愛そのものだと、わたしは思うの」
「……愛?」
「そうよ! そんな色を持つあなたはきっと誰よりも愛情深いんでしょうね。あなたに愛される人はとても幸せ者だわ、羨ましい。わたしね、赤色が好きなの。本当に大好きよ」
赤色肯定のプレゼンは止まることを知らない。
ピフラの舌がこんなに回ったのは、壺を割って言い訳した時以来。実に6年ぶりである。
ガルムを手塩にかけんとピフラの瞳は真っ赤に充血しており、およそ淑女とは思えない人相である。
気がつけば、互いの膝が触れ合うほどガルムの近くまで迫っているほどで。
心理的にも物理的にもピフラに追い込まれたガルムは遂に降参した。
「わかっ……分かりましたから!」
「そう? じゃあ何が分かったのか言ってみて!」
表情がパッと明るくなったピフラは、鼻を「ふんっ」と鳴らした。
(渾身のプレゼンが効いた!? ほらね、赤色って最高だよね? 自己肯定感上がったよね? ていうか上がれ!!)
興奮冷めやらぬピフラ。すると、ガルムは赤々と茹だった顔で一杯一杯に答えた。
「……なんですよね」
「え、何? もう1回」
「だから……お、俺のことが好きなんですよね!!」
──うん?
ピフラの時がピタッと止まった。