「くっ……あ……はぁはぁ……」
「あ、あぁ!!」
成宮先生の熱い果実が、自分の中で弾けたのを感じる。
彼の体が小さく震えた。
「はぁはぁ……葵……」
「……え?」
「可愛い……可愛い……」
荒い呼吸を整えながら、成宮先生がフワリと微笑む。
久しぶりに見るその笑顔に、俺の胸はキュンと締め付けられた。
先生と付き合ってまだ一年もたってないのに、一体何度体を重ね合わせたんだろう……ってくらいの頻度で、成宮先生は俺を求めてくる。
医師の勤務はとてもハードだ。よくそんな体力あるなぁ……って、感心してしまうくらいだ。
「もう、駄目だ。眠たい」
「え? ちょっと!?」
俺に覆いかぶさっていた体がバランスを失い、そのまま倒れ込んできたから、必死に成宮先生の体を受け止める。
耳元からは、スースーという規則正しい寝息が聞こえたきた。
「あの、千歳さん……?」
そっと顔を覗き込めば、とても気持ち良さそうな顔をして眠っている。
その表情は、たくさん遊んだ子供が、母親に抱かれて眠っているときのように安心しきったものだった。穏やかな呼吸の音に、静かにゆっくりと上下する胸。
そんな成宮先生が愛しくて、そっと髪を撫でる。
「可愛い」
成宮先生は俺より年上だし、職場では上司だ。
でも可愛いという言葉を、口に出さずにいられない。
「俺は、あなたが可愛いです」
そっと呟いてから、瞼にキスをした。
きっと、この人がこんな無防備な姿を晒すのは、きっと俺だけだ。
そう思うと愛しくなってくる。
あの小児科病棟の若きエースが、今、俺の腕の中にいる……こんな何の取り柄もない俺が、成宮千歳を独占してるんだ。
それは、何ヶ月成宮先生と一緒にいても不思議に感じるし、いくら考えても答えなんて出るはずもない。
ただ、俺はこの人に愛されている。
それは紛れもない事実だ。
俺は、そんな幸せに小さく身震いをする。
いつもは先生が俺を抱き締めてくれてるんだけど、今日は俺が成宮先生を抱き締めた。
フワリと顔をくすぐった成宮先生の髪からは、甘いシャンプーの香りがした。
「先生の経験人数って、何人くらいなんだろう」
成宮先生の頭をギュッと抱き締めながら呟く。
「百人とかだったらどうしよう」
俺は一人で想像して、勝手に身悶えた。
「なんでこんなにハイスペックな人が、こんな俺なんかを好きになったんだろう」
小さく欠伸をしながら、成宮先生の髪に顔を埋める。
疲れて寝てしまうくらいなのに、俺を抱きたがるなんて意味がわからないし。
「なんでだろう……」
少しずつ睡魔に襲われて、俺は目を閉じる。
ただ、意地悪なのに優しいこの人が、俺は大好きだった。
◇◆◇◆
医療や介護なんかの現場で働いていると、たくさんの出会いがある。その素晴らしい出会いに、俺達は支えられてるような気がした。
「ありがとう」
「本当に助かりました」
「先生のおかげです」
そんな言葉や笑顔を思い出す度に、辛い事や苦しい事も、乗り越えて行ける。
『一期一会』とは良く言ったもので、俺は小さな出会いひとつにも感謝したいと思っていた。
逆に、別れもある。
人は、生まれてきたからには、いつか死んで行く。それは、生命がこの地上に誕生したその瞬間から決められた逃れられない運命なのだ。
そして、病院で働いていれば、嫌でも死に直面しなければならない。
小児科が、医師や看護師にあまり人気がないのは、「子供が死んで行く姿を見たくない」という思いがあるからだろう。
これは、俺が医師になって初めて『別れ』を経験した時のお話だ。
俺が、正式に小児科病棟へ配属されたのは、可愛らしい桜が満開に咲き誇る頃だった。
期待と、そしてそれ以上の不安や恐怖を感じながら、医師としての第一歩を踏み出した瞬間でもある。
「あ、あぁ!!」
成宮先生の熱い果実が、自分の中で弾けたのを感じる。
彼の体が小さく震えた。
「はぁはぁ……葵……」
「……え?」
「可愛い……可愛い……」
荒い呼吸を整えながら、成宮先生がフワリと微笑む。
久しぶりに見るその笑顔に、俺の胸はキュンと締め付けられた。
先生と付き合ってまだ一年もたってないのに、一体何度体を重ね合わせたんだろう……ってくらいの頻度で、成宮先生は俺を求めてくる。
医師の勤務はとてもハードだ。よくそんな体力あるなぁ……って、感心してしまうくらいだ。
「もう、駄目だ。眠たい」
「え? ちょっと!?」
俺に覆いかぶさっていた体がバランスを失い、そのまま倒れ込んできたから、必死に成宮先生の体を受け止める。
耳元からは、スースーという規則正しい寝息が聞こえたきた。
「あの、千歳さん……?」
そっと顔を覗き込めば、とても気持ち良さそうな顔をして眠っている。
その表情は、たくさん遊んだ子供が、母親に抱かれて眠っているときのように安心しきったものだった。穏やかな呼吸の音に、静かにゆっくりと上下する胸。
そんな成宮先生が愛しくて、そっと髪を撫でる。
「可愛い」
成宮先生は俺より年上だし、職場では上司だ。
でも可愛いという言葉を、口に出さずにいられない。
「俺は、あなたが可愛いです」
そっと呟いてから、瞼にキスをした。
きっと、この人がこんな無防備な姿を晒すのは、きっと俺だけだ。
そう思うと愛しくなってくる。
あの小児科病棟の若きエースが、今、俺の腕の中にいる……こんな何の取り柄もない俺が、成宮千歳を独占してるんだ。
それは、何ヶ月成宮先生と一緒にいても不思議に感じるし、いくら考えても答えなんて出るはずもない。
ただ、俺はこの人に愛されている。
それは紛れもない事実だ。
俺は、そんな幸せに小さく身震いをする。
いつもは先生が俺を抱き締めてくれてるんだけど、今日は俺が成宮先生を抱き締めた。
フワリと顔をくすぐった成宮先生の髪からは、甘いシャンプーの香りがした。
「先生の経験人数って、何人くらいなんだろう」
成宮先生の頭をギュッと抱き締めながら呟く。
「百人とかだったらどうしよう」
俺は一人で想像して、勝手に身悶えた。
「なんでこんなにハイスペックな人が、こんな俺なんかを好きになったんだろう」
小さく欠伸をしながら、成宮先生の髪に顔を埋める。
疲れて寝てしまうくらいなのに、俺を抱きたがるなんて意味がわからないし。
「なんでだろう……」
少しずつ睡魔に襲われて、俺は目を閉じる。
ただ、意地悪なのに優しいこの人が、俺は大好きだった。
◇◆◇◆
医療や介護なんかの現場で働いていると、たくさんの出会いがある。その素晴らしい出会いに、俺達は支えられてるような気がした。
「ありがとう」
「本当に助かりました」
「先生のおかげです」
そんな言葉や笑顔を思い出す度に、辛い事や苦しい事も、乗り越えて行ける。
『一期一会』とは良く言ったもので、俺は小さな出会いひとつにも感謝したいと思っていた。
逆に、別れもある。
人は、生まれてきたからには、いつか死んで行く。それは、生命がこの地上に誕生したその瞬間から決められた逃れられない運命なのだ。
そして、病院で働いていれば、嫌でも死に直面しなければならない。
小児科が、医師や看護師にあまり人気がないのは、「子供が死んで行く姿を見たくない」という思いがあるからだろう。
これは、俺が医師になって初めて『別れ』を経験した時のお話だ。
俺が、正式に小児科病棟へ配属されたのは、可愛らしい桜が満開に咲き誇る頃だった。
期待と、そしてそれ以上の不安や恐怖を感じながら、医師としての第一歩を踏み出した瞬間でもある。