チュッチュッと口付けられれば、それだけで気持ち良くて……俺は蕩けてしまいそうになる。
 夢中で成宮先生の首にしがみついて、唇が離れそうになれば、更にその腕に力を込めた。

「どうした?今日はヤケに積極的じゃん」
「だって、だって……」
 成宮先生が自分のことでヤキモチを妬いてくれることが嬉しいだなんて、正直俺もイカレてる。
 こんなに独占欲が強くてワガママな恋人なんて、尻尾を巻いて逃げて行くのが普通だろう。
 でも、それが嬉しいだなんて、この目の前にいる男に洗脳されてしまった……としか思えない。
 自分のぺったんこの胸をまさぐる手も、食べられちゃうじゃないかってくらい激しく口付けてくる唇も……気持ち良くて仕方ないんだ。


 最初は成宮先生に肌を晒すことさえ恥ずかしかったのに、今となっては素肌を重ねることが心地よくて仕方ない。
 ソファに組み敷かれて、女の子みたいに足を大きく開かされて……それでも飽き足らずに、俺は先生の腰に足を絡ませた。
 

「葵、痛くないか?」
「はい。痛く、ない……あ、んぁ……」
「痛くなんかないか……本当に気持ち良さそうだもんな」
「うん……気持ちいい……」
 汗で額に張り付く髪を掻き上げてキスをしてくれる成宮先生に、俺は自分からチュウっと口付ける。
 まるで硝子細工に触れるかのように自分を抱く成宮先生が擽ったくて、それが快感を助長していった。


 普段は塩対応なくせに、俺を抱くときには優しいだなんて……そんなの反則だ。


「好きだ、葵」


 耳元でねっとりと囁かれて、敏感なお腹の中をまるで責め立てられるように擦られるていく。
 成宮先生の激しさについていけなくて、俺は成宮先生に無我夢中でしがみついた。
 息さえできなくて、必死に酸素を求めて必死に口を開く。
 そんな俺の唇は簡単に塞がれてしまって、苦しくて、でも気持ちよくて……頭の中が真っ白になった。


 何度絶頂に追い詰められても、その激しい動きからは逃れることなんてできない。
 体中がまるで性感帯のようになってしまった俺は、ただ成宮先生によって絶頂を迎えさせられ続けて、悲鳴に近い喘ぎ声を出すことしかできなくなってしまう。
 そんな俺を見て、成宮先生の雄としての本能がどんどんと覚醒していくのがわかる。
 最後のほうなんて、「ごめんなさい。もう無理……」って泣きながら許しを請うことしかできないのだ。


 でも、そんな荒々しく扱われるのも嫌いじゃない自分もいる。
 こんなことで普段より興奮してしまうから、成宮先生を喜ばせちゃうんだってわかってはいるけど……。
 所詮は惚れた弱みなのだ。


「駄目だ、気持ちよすぎる……」
 まるで陸に打ち上げられた魚のように口をパクパクさせながら、必死に呼吸を整える。
 でも全然駄目だ………気持ちいいのが全然引かない。


「葵、可愛い」
 目を細めながら、俺の頭を撫でててくれる成宮先生。
 その満足したような顔に、俺は多幸感に包まれる。


「千歳さん、好き……」
「俺もだよ、葵」
 成宮先生の優しいキスを感じながら、俺は意識を手放したのだった。

◇◆◇◆

 爽やかな朝、俺が出勤してまずやること……。
 それは、デクス周りの整理や、植木鉢の水やり……ではない。昨夜犯した、己の醜態の反省会だ。
「まさか……あんなに乱れてしまうとは……」


 気が付いた時には、体を綺麗にしてもらい、洋服を着せて貰った状態で、成宮先生に抱かれてベッドで寝ていた。
『お前、本当にエロくなったよなぁ……』
 朝からニヤニヤとご満悦の先生を見て、俺はプルプルと震えながら俯くことしかできなかった。
 その表情からは、『俺の手にかかれば、お前なんかチョロいもんだ』というのが手に取るようにわかってしまい……。
 でも、それは事実で……。
 俺は悔しくて、悶えることしかできなかった。


「……でも、気持ち良かったなぁ」
 散々自己嫌悪に陥った後、机に突っ伏してポツリ呟いた。これが俺の本音。
 所詮、成宮先生に開発されたこの体は、成宮先生のお気に召すように反応してしまうのだ。
 悔しいけど仕方ない。