雪は止むどころかどんどん積もっていき……公園を白銀の世界へと変えて行く。
「帰ろ?」
「はい」
 成宮先生が差し出してくれた手に、勢いよく飛びついた。
「葵、大好きだ」
 そう笑ってくれた。
 それは俺の大好きな笑顔で。嬉しくて、幸せで……体は震えるほど寒いのに、心がポカポカと温かくなった。


「なぁ、お前あのまま俺が来なかったら、あいつと浮気してたの?」
「はい、多分してました」
「はぁ!? なんでだよ!?」
「それが案外イケメンだったんです。抱かれてもいいな、って思えたんですよ」
「あーおーいー!!」
「ふふっ。自業自得ですよ……なんて、浮気するつもりなんて全然ありませんでした。ただ、あなたを試してみたかった……俺も最低なんです。ごめんなさい。」
 静まり返った聖夜に、成宮先生の叫び声が響き渡った。


 俺は、恋人の誕生日であるクリスマスに、浮気をしようと思ってました。
 でも結局はできなかった。
 ううん、させてもらえなかった。だってあなたは、どんな方法を使ってでも、俺の浮気を阻止したでしょう?
 そんなんわかりきってた。だって結局は、あなたも俺にベタ惚れなんですよ。


「葵、ケーキ買って帰ろう?」
「俺、苺のショートケーキがいいな」
「はぁ!? チョコレートケーキだろ?」
「えぇ! ショートケーキですよ!?」
「絶対にチョコレートケーキだ」


 もう長いこと付き合ってるくせに、全然気が合わない俺達……思わず笑ってしまった。


「その毛糸の帽子。凄く似合ってる」
 突然成宮先生が嬉しそうに笑う。
「メチャクチャ可愛い」
 そんな笑顔を見れば、やっぱり成宮先生が大好きで……どんなに酷い扱いを受けたって、嫌いになれるはずなんかない。


 二人でショートケーキをワンホール買って、吐く直前まで頑張って食べた。
 それから、久しぶりに優しく成宮先生に抱かれた。
 その、硝子細工に触れるかのような優しい扱いに、逆に照れ臭くなってしまう。


「葵、気持ちいい?」
「気持ちいい……千歳さん、大好き」
 ギュッと抱き合えば、甘いクリスマスに絆されて……二人で蕩けてしまいそうだ。
 優しく後孔を解されて……「もうちょうだい?」とねだるまで、可愛がってもらって。
 熱い熱い成宮先生を受け入れた瞬間、あまりの快感に全身が甘く痺れた。緩やかに体を揺さぶられながらお腹の中を擦られて……体の芯から火照り出す。
「……気持ちいい……」
「気持ちいい? よかった」
「はい……もっと、もっと奥を突いて……ねぇ、足りない……」
「可愛いな、葵」
 奥深くを突き上げられて、その快感に体を捩って酔いしれた。


 俺の気持ちいところも全て知り尽くした相手だから、簡単に絶頂へと追いやられてしまう。
 ただ気持ちいい世界に突き落とされる感覚。
「あぁ、今日は寝かせてもらえそうもないな……」
 そう頭の片隅で思う。ならば……。
「もっと、もっと強く……まだ足りない……」
「馬鹿、あんまり煽るな」
 成宮先生の首に腕を回し、自分からその唇を貪る。
 もう気持ちよすぎて、成宮先生が好き過ぎて……意味がわからない。


 聖なる夜に、大好きな人と結ばれる喜びを、実感する。
 俺には関係ない……そう思っていたクリスマスに、すっかり酔いしれてしまった。

◇◆◇◆

 十二月二十五日。
 朝目覚めると、枕元にまたプレゼントの包みが……。
 それを手に取って首を傾げていれば、隣で寝ている成宮先生が照れ臭そうに笑った。


「朝方さ、サンタクロースが来て『色々とごめんね』って、葵にだけ特別にプレゼントもう一つくれたんだよ」
「……やっぱりサンタクロースっているんですね」
「いるよ。葵専属の、な?」
「ありがとう。サンタさん」


 俺が悪戯っぽく笑って見せれば、成宮先生は顔を真っ赤にして目を泳がせていた。


 でも困ったな、俺はプレゼント用意してない。きっと千歳さんは、『気にすんな』って言ってくれるだろうけど……。
 それじゃ、俺の気が済まないよ。


 隣にいる成宮先生を、そっとベッドの上に押し倒す。その逞しく鍛え上げられた体に馬乗りになり、股間を押し付けた。
「もう一回、しませんか? 今日は俺が頑張りますから」
「へぇ……それは期待しちまうな」
 今日は、いっぱいいっぱい甘えさせてあげたいと思う。
 それに、今日だけでも素直に甘えようとも思った。


「千歳さん、お誕生日おめでとう。それから、メリークリスマス」


 甘く囁いてから、蕩けてしまいそうなキスを交わした。