あなたのお気に召すままに


 その瞬間、シ〇デレラ城の横に大輪の花火が打ち上がった。
「わぁ……綺麗……」
 色とりどりの花火は夜空に所狭しと輝きを放ち、思わず見とれてしまう。
 成宮先生の顔も、花火みたいにキラキラ輝いてて……すごく綺麗だ。
 回りに人がいなかったから、ツイッと背伸びをしてチュッと唇を奪ってしまう。
「これで、仲直り……してください」
「バァカ」
 恐る恐る顔を覗き込めば、少しだけ頬を赤らめながら笑ってくれた。


「わかったよ。こんな可愛いことされたら、帰れるわけねぇじゃん。バカ葵」
「ごめんなさい」
「もう俺から離れるなよ」
「はい」


 結局は、俺に甘くて優しい成宮先生が大好きだ。


 それからいくつかのアトラクションを、またバカ騒ぎしながら乗って。
 気付けばあっという間に閉園の時間になってた。
 夢から覚める瞬間は、いつも寂しくて悲しくなる。その度にまた来ようって勝手に心に誓う。
 それが果たせる日なんて、早々来ないことを分かっているのに……。


「これ成宮先生に似てる!」
 帰る途中のショップで、何年も前に大ヒットした映画に出てくる、雪だるまの大きなぬいぐるみを見つけて思わず笑ってしまった。
「あぁん?どこがだよ?」
「ふふっ。雰囲気が凄く似てる……」
「俺の鼻は人参じゃねぇぞ」
「あ、そっかぁ!」
 それでもやっぱり似ていてケラケラ笑っていれば、突然成宮先生が俺からそのぬいぐるみをひったくりレジに向かった。


「ほら、これならいつでも俺といられんだろうが?」
 清算が終わったオ〇フ⛄を押し付けられたから、嬉しくなって思わずギュッと抱き締めてしまう。
「ありがとうございます」
「お前、本当に子供みたいで可愛いな」
 そんな俺の頭を優しく撫でてくれた。


 エントランスを後ろ髪を引かれる思いでくぐれば、やっぱり寂しくなる。
「葵、葵、手を繋ごう?」
 成宮先生が抱っこしていたオ〇フが話かけてくる。右手をプラプラ振りながら。


 その光景は涙が出てしまうほど愛しくて、幸せな光景。
 俺達は、オ〇フを間に挟んで手を繋いだ。
 まるで手を繋ぎたくても繋げない俺達を、オ〇フが手伝ってくれてるみたいだね。


「葵、また来ような」
「はい。また来たいです」


 何度も何度も繰り返し約束をする。


 ディ〇ニーランドに行くと、カップルは喧嘩するっていうジンクスはあながち嘘じゃないんだなって思った。
 ただ、喧嘩したって仲直りすればいい。
 そしたら、相手のことがもっともっと好きになれるから。


 車を発進させる前に、キスをした。
 啄むだけのキスから、少しだけ深いキス。


 ありがとう。本当に楽しかったね……って顔を見合わせて笑った。