確かに、田崎様は二泊の予定だったけれど。わたしには秘策があった。
「うん。でも来週、ウチのホテルで『さくら祭り』があるよね。そこにあの親子をご招待するの。それに間に合えばいい」
「『さくら祭り』……。それなら宿泊客じゃなくても参加できるな」
ウチのホテルでは、祖父が開業した当時から毎年季節ごとに催しものを行っていて、その日は宿泊客じゃなくても気軽に来館してもらえるのだ。
四月は桜の季節なので、ホテル全体を使用した大規模なお花見会を行っている。それが『さくら祭り』である。
「でしょ? それに、その日にはちょっとしたサプライズも仕掛けてるんだ♪ 京香さんの別れたご主人の連絡先はそのために必要だったの」
「……オーナー、そこまで言っちまったらもうサプライズじゃなくなるじゃん」
「…………あ、だよねぇ。でも陸さんにしか言ってないから大丈夫」
「だったらさぁ、もう全従業員巻き込んで、ホテル全体からの大仕掛けにしちまえばいいんじゃないか? 俺からもみんなに声かけとくし」
彼のアイデアにわたしは目からウロコが落ちた。そうか、その手があったか! どうしてわたしと陸さんの二人だけでやろうとしていたんだろう!
「そうだよね。それいいかも! ありがとう、陸さん!」
わたしは思わず立ち上がり、彼と両手でカッチリ握手していた。
「……いやいや、感謝するのはまだ早いだろ。まずはこの作戦を成功させないと」
「あ……、そうでした」
陸さんの冷静な返しに、わたしもシュンとなる。
「じゃあ、メシ食い終わったらさっそく行ってくる。……そういえば、オーナーももうすぐ誕生日だったよな」
「え……、うん。四月十五日だけど。それがどうかした?」
「…………いや、何でもない」
彼はまたふいと視線を逸らし、食事を再開した。わたしも頭の中にはてなマークを飛ばしながらスプーンを動かす。
(誕生日……か)
去年までは、一人暮らしをしていたアパートの部屋にも父からプレゼントとしてテディベアが送られてきていたけれど。父がいなくなった今年の、二十四歳の誕生日にはもうそれもなくなるのかなと淋しく思っていた。
でも……、陸さんはどうして急に、思い出したようにそんなことを言いだしたんだろう?
「うん。でも来週、ウチのホテルで『さくら祭り』があるよね。そこにあの親子をご招待するの。それに間に合えばいい」
「『さくら祭り』……。それなら宿泊客じゃなくても参加できるな」
ウチのホテルでは、祖父が開業した当時から毎年季節ごとに催しものを行っていて、その日は宿泊客じゃなくても気軽に来館してもらえるのだ。
四月は桜の季節なので、ホテル全体を使用した大規模なお花見会を行っている。それが『さくら祭り』である。
「でしょ? それに、その日にはちょっとしたサプライズも仕掛けてるんだ♪ 京香さんの別れたご主人の連絡先はそのために必要だったの」
「……オーナー、そこまで言っちまったらもうサプライズじゃなくなるじゃん」
「…………あ、だよねぇ。でも陸さんにしか言ってないから大丈夫」
「だったらさぁ、もう全従業員巻き込んで、ホテル全体からの大仕掛けにしちまえばいいんじゃないか? 俺からもみんなに声かけとくし」
彼のアイデアにわたしは目からウロコが落ちた。そうか、その手があったか! どうしてわたしと陸さんの二人だけでやろうとしていたんだろう!
「そうだよね。それいいかも! ありがとう、陸さん!」
わたしは思わず立ち上がり、彼と両手でカッチリ握手していた。
「……いやいや、感謝するのはまだ早いだろ。まずはこの作戦を成功させないと」
「あ……、そうでした」
陸さんの冷静な返しに、わたしもシュンとなる。
「じゃあ、メシ食い終わったらさっそく行ってくる。……そういえば、オーナーももうすぐ誕生日だったよな」
「え……、うん。四月十五日だけど。それがどうかした?」
「…………いや、何でもない」
彼はまたふいと視線を逸らし、食事を再開した。わたしも頭の中にはてなマークを飛ばしながらスプーンを動かす。
(誕生日……か)
去年までは、一人暮らしをしていたアパートの部屋にも父からプレゼントとしてテディベアが送られてきていたけれど。父がいなくなった今年の、二十四歳の誕生日にはもうそれもなくなるのかなと淋しく思っていた。
でも……、陸さんはどうして急に、思い出したようにそんなことを言いだしたんだろう?



