あっという間に講演が終わった。
 わたしは急いで会場を出ようとしたが、「出口に近い方から順番にお願いします」というアナウンスに阻まれて、如何ともしがたかった。
 会場を出た時にはあの女性の姿は影も形もなく、彼女が身に着けている物も一緒に消えていた。
 
 落ち込んだ。
 しかし、どうしようもなかった。
 縁は切れたのだ。
 諦めるしかなかった。
 天を仰ぐと、千切れ雲が同情していた。
 
 ご愁傷様。
 
 その声は風に運ばれてどこかに飛んでいった。