ふと気づくと、周りには誰もいなかった。
 隣の女性の姿もなかった。
 驚いて腕時計を見ると、講演会はとっくに始まっていた。
 慌てて整理券を手に入場口へ走った。
 
 中に入ると、席は人で埋まっていた。
 係員に訊くと、最後列の端の席を指差された。
 そこしか空いていないようなので、着席している人の迷惑そうな視線を感じながら、頭を下げてその席まで行った。
 そして、座るとすぐにあの女性を探そうとした。
 しかし、会場は圧倒的に女性が多い上に、後姿しか見えないので諦めるしかなかった。